2015年10月5日 更新

第四回:世に蔓延る鉄塊の獣、君には操る業があるだろうか

記事公開日:2015/03/17

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記事公開日:2015/03/17

季節は春。皆様、ご機嫌いかがでしょうか。私は最近、暇です。
いや、ずっと暇だったのですが、殊更に暇を実感している今日この頃なのです。
なぜかと申しますと。
昨年7月より、都内から夫の実家があるS県A市に転居し、義両親と二世帯同居をスタートさせました。
引っ越ししてからしばらくは、片付けや家具の購入に精を出したり、慣れない土地を散策してスーパーやいい感じの飲食店(主に呑み屋)を探したりと町に馴染みを入れながら程々に忙しく過ごしておりましたが、さすがに半年を過ぎる頃になると、家にも町にもすっかり慣れてしまい、ほんのり「暇だな~」と思い始めたのです。
但し、暇だけど、「退屈」ではないのです。
私は人より暇に対する耐性が整っているタイプのようで、テレビ、昼寝、読書、はたまた妄想などで、ぼーっと過ごすことが、さほど苦痛ではありません。
特にテレビは、音楽を聴いている時と寝ている時以外は四六時中点けっぱなし。平日は朝、夫を会社に送り出すと、小一時間はザッピングしながら、ダラダラと過ごします。
最近ハマっているのが、テレビ東京の「なないろ日和!」。
薬丸裕英と香坂みゆきという司会に加え、にしおかすみこ、ドロンズ石本など、味わい深いレギュラー陣でお送りする情報番組です。
ホームページを見たところ、「リラックスして楽しむことが出来る番組」とあり、確かに一見、料理やレジャー、ファッションなどユルいテーマが中心です。
が、油断はできません。何故なら、奴らの狙いは我々の懐だからです。
例えば、「お鍋特集」→白ダシ、「ひな祭りのおもてなし料理特集」→鍋、「およばれファッション特集」→桂由美パールネックレス、といった具合に、すべては通販につながるように出来ているのです。いや、むしろ商品ありきで番組作りがなされていると言っていいでしょう。「なないろ日和!」というほっこりしたタイトルの「!」の部分に、その商魂の逞しさが表れているようです。
情報番組というヴァースからテレビショッピングというサビに移ると、いきなりしゃしゃってくる山内乃理子、明山直未というテレ東御用達のプロさくらコンビが、上品な語り口&朗らかな関西弁のデュアルで「美味しい!」「味染みてる~!」「上品な輝き!」「顔が明るく見える〜!」と、商品の素晴らしさを畳み掛けてきます。超キャッチーです。
が、作り手がおっしゃる通りリラックスしながら見ておりますので、価格紹介の前に舟を漕いでしまうこともしばしば。
さて、「なないろ日和!」の話は尽きませんがこれくらいにして。
いくら暇を楽しめるタイプとはいえ、日がな一日引きこもっている訳にはいかない!と、最近ベランダでハーブガーデニングを始めました。ステキな奥様っぽいでしょ?
ハーブと言っても、美味しく食べる草のこと。正真正銘の合法ハーブです。
最近、ルッコラに花が咲きました。観葉植物すらすぐに枯らしてしまう私は、「意外と向いてるのかも!」とウキウキしましたが、よく調べたら、ルッコラは花を咲かせると葉が固くなって美味しくないので、こまめに剪定をしないといけないそうです。
南無三!ステキな奥様への道は険しい。
外=ベランダって、結局家から出てねえじゃん!という突っ込みはごもっとも。
ですが、この土地では外へ出るにあたって一つ、乗り越えなければならない壁があり、私はその件について、恐怖に慄きながら目を瞑り続けて生活しているのです。
そう、あの恐ろしい「鉄塊の獣」のことを…。
私の最終学歴は専門学校ですが、今から2年前の4月、15年振りに「学校」へ入学することになりました。
都内近郊にお住まいの方しかピンと来ないかもしれませんが、山手線の恵比寿と目黒の間で、デカくて赤い球体のオブジェを見たことありませんか?
そこが私の通った、「H自動車学校」。つまり、自動車教習所です。
これまで運転免許を取得しなかった理由は、ズバリ「怖かったから」。
切っ掛けは、小学生の時に遡ります。その頃、私はそろばん塾に通っておりまして、塾では年に一度遠足があり、行き先は何故か毎年、今はなき「多摩テック」という東京の外れにある遊園地でした。多摩テックはゴーカートが名物で、幼い私も何度か乗ったのですが、ガンガン壁にぶつかってしまいまったく前に進めず、先にゴールした友人を待たせては軽く嫌な顔をされていたのです。その頃から、自分は何かを操縦することが苦手である、という意識が植えつけられました。
更に高校生の頃、ゲーセンのレーシングゲームで逆走してスタート地点に戻ってしまい、友人に爆笑されながら「お前、絶対免許取るなよ!人殺すよ!」と言われたり、友人の彼氏(ヤンキー)に車で送ってもらったところ、自分の家までの道をうまく説明出来ず、何故か辺鄙な山道に入ってしまい強面の友人彼氏を怒らせたり…とにかく、運転に向いていないことは明白だったのです。
両親からは、18歳になった頃から免許を取れとせっつかれていたのですが、「電車の移動で困ったことないし、環境にもいいから」とエコぶったり、「女は助手席に乗るものだから」とモテる女を装ったりしながら全力で拒否。
本当は、ただ運転が怖かっただけです。
そんな私が何故一念発起したかというと、単純に、必要になったからです。
結婚してしばらくは都内に住んでいたのですが、いずれは夫の実家があるS県に引っ越すことになっており、義両親から「こっちに来たら車の運転が出来ないと不便だから、免許を取っておいてね」とお達しが出たのです。
内心ビクビクでしたが、家族でどこかへ出かける際に、夫や義両親に運転をさせる態度も身体もデカい嫁になるわけにゃいかず、頰をバチバチ叩きながら、在京中に教習所へ通うことになりました。
H自動車学校には、初日に入校式があります。
入校式と言っても、教習の説明と、心理テストのようなもの(適性検査といいます)をやる程度なのですが、その際隣に座った男性が、なんと私の大好きなお笑い芸人Yだったのです!いきなり芸能人に会うとか!これが東京なのか?!
どうやら彼は大型二輪を取りに来たらしく、中型は既に持っているので、正味20日間しか通っていなかったそうですが(後にラジオで聞きました)、その時の私は前向きでした。「またYを見かけるかもしれないし、楽しく通えそう!よし!頑張って免許を取った暁には、いつかIN FLAMESを生んだイエテボリの名車、VOLVOに乗るぞ!」と。
ところがどっこい、トラウマの根深さを侮ってはいけません。
一番初めに就いてくださった教官は、こともあろうにあの友人彼氏に顔も口調もソックリのヤンキー風!ただでさえしている緊張はより増し、アクセルやハンドルの調節がまったく出来なかった私は大パニックになってしまい、結果、ラスト20分は車を停め、車内で先生とおしゃべりをして過ごすという赤っ恥をかいてしまったのです。
その他にも、冷酷に接してくる保阪尚希似の教官や、厭味ったらしい教官などに当たり、すっかり萎縮してしまいました。
ヤングメタラーの皆さん、「傷ついた経験が、己を強くする。よって経験値の高い大人は強い」って思っていませんか?否!私は、真逆と思っています。
若い頃は無知故に、新しいことに飛び込んでいく勇気がありますし、そこでもし失敗し、怒られたとしても「若いんだからしょうがない!」と開き直ることも出来ます。
しかし、大人になると「いい歳こいてこんなことも出来ないのか」と、これまでの人生や、そこから培ってきた人格まで否定されているような気持ちになってしまうのです。更に、怒られて傷ついた経験から「もう怒られたくない」という予防線を張る臆病さが身に付いてしまいます。
35歳(当時)主婦、この時ばかりは「運転は出来ないけど、私にはメタルがある!」という呪文(コラム第一回を参照)は効きませんでした。
そして後日、たまたまテレビを見ていると、無事大型バイクの免許を取得したYが、高速道路で転倒し、怪我を負ったというニュースが!教習所の同級生(?)であるYが事故ったとあり、まだ路上にも出られていなかった私は一層、運転に苦手意識を持つようになってしまいました。そこから約1ヶ月、登校拒否をします。
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