2015年10月5日 更新

第1回:ストリーミングをポジティヴに考えてみる

記事公開日:2015/08/14

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記事公開日:2015/08/14

「果たしてストリーミングは害悪でしかないか」

ストリーミングでの音楽配信が盛んな今、音楽ファンだけでなく様々なアーティストが意見を述べているのを見聞きしている方も多いのではないか。先日、NHK『クローズアップ現代』でも特集され、非常に興味深い内容だった。まさに賛否両論が渦巻き、SNSや音楽メディアを中心に是非が問われ、活発な意見交換がなされている。アーティスト、特にコンポーザーの多くはその便利さを認める一方で、例えば具体的にどれだけの収入があるのかという点に於いて手放しで喜べない面もあるようだし(これに関しては先のテイラー・スウィフトの一件が有名だろう)、音楽ファンにしてもギリギリ所有感を得ることができるダウンロード配信ですらないところに抵抗を感じる人は決して少なくないと思われる。
先日、メタライゼーション・ドット・ジェイピーの方とお話をする中でこの話題になった。話はなかなか盛り上がり、その結果、こうやって拙文を書いている。率直に言って一音楽ファンの立場からすればストリーミングのサービスはなかなか素晴らしく、サービス開始以来、かつてないほど手軽に音楽と触れ合える悦びを感じることが増えた。
結論が出るのはまだ先の話だが、確かにストリーミングはあまり大きな利益は生み出さないだろうと予想できる。利益だけで言ってしまえばCDを売るのが最も良いのは事実だ。金の話は嫌なものの、金が無いと活動だってままならない。最近では音楽専門のクラウドファンディング・サイトが国内でも幾つかあって、それを有効活用しているアーティストも存在するが、その話はまた別の機会に譲り、話を戻そう。果たしてストリーミングはアーティストにとってメリットが見当たらない「自分たちの音楽が安物扱いされる、儲けの出ない害悪でしかないもの」だろうか。私のような音楽ファンからすれば、まず何よりも興味を持ったアルバムを手軽にフルで聴けるのは有り難さすら感じ、音楽がより身近になったような印象すらある。その想いから、アーティストも否定的になるばかりではなく、メリットに感じるポジティヴなストリーミングとの付き合い方を考えても良いのではないかと思うに至った。ストリーミングからはじまった出会いが、音源の購入やライヴに足を運んでくれるというところを経て、最終的にライヴに足繁く通い、マーチャンダイズも購入し、いつしかバンドのダイ・ハードなファンになる。音楽との出会いの形は様々。別のバンドが目当てでライヴハウスへ行って観たら格好良くて気に入った、雑誌等の記事が目に止まった、SNSでの口コミで気になった等々。そこから能動的に「彼らの音楽を聴きたい」と思わせた時、ストリーミングを良い入り口として加えても良いのではないか。

「でもやっぱり音源購入して貰いたいし、ライヴに来て貰いたいですよね」

「気になる」というレベルのアーティストの音源を、音楽的な情報が無い段階で買うのは結構な勇気もいるし、ライヴとなるとさらにハードルが高い。それ以前に毎週多くのタイトルがリリースされ、ライヴが開催されている中、2,000円前後の金は決して安くない。多くの選択肢からその額を出そうとするきっかけ作り。興味を持ってくれている人のニーズに応えたものを提供する環境作りは必要だ。ストリーミングもそのひとつになり得る力を持っていると感じさせる。割り切ってストリーミングを試聴機能のひとつとして活用し、そしてCDに辿り着こうとするお客さんへお得感を演出して誘導するのはどうだろう。既に実践されている事例だが、会場限定盤(買いやすい低価格のものや、逆にたくさんのボーナス・トラックを付けるとか)の販売、マーチャンダイズやワンマンなら公演チケットとCDとのバンドル販売、買ってくれた方へのファンサービスをより良いものに演出していく努力。要するにショップで購入してくれたお客さまも含めて、単なる音楽の入った円盤以上の魅力的なアイテムへと昇華させていく。ダウンロード販売にしても、CD以上の音質を持ち高価格帯で販売できるハイレゾでの配信は音質の拘る傾向の強いメタル・ファンへのアピールになるし、逆に配信のみの簡易な作品、キャリアのあるバンドなら簡易なベスト・アルバムを安価で販売して(これは一部の海外のレコード会社が既に実践している)、入口の少し先の道筋を作ってあげることだって可能だ。CDよりもページ数の多いデジタル・ブックレットを付けるのも言葉や写真といった部分にも拘るアーティストにとっては魅力的だ。これはほんの一例で、やれることはアーティストの体力によって様々だろうが、考え方次第ではなかろうか。
「ストリーミング配信はそこで満足してしまい、その先の購入に繋がらないのではないか」という意見は多い。繰り返すが結論が出るのはまだまだ先の話で、今は手探り状態の中でアーティストもファンも試してみる時期だ。ならば何もしないより、何かした方が建設的だろう。何もしなければ、当然何も生み出せないのだから。昔ながらのやり方に固執するのも職人気質で格好良いかもしれないが、時代に合わせて売り方を考えてみるのも案外悪くないのではと、様々なストリーミングに対する意見を眺めながら思うのだった。
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