2015年10月31日 更新

第6回:熱い思いが動かした世界——GYZEの場合

記事公開日:2015/10/31

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記事公開日:2015/10/31

 出会いというものにもいろいろありますが、一度きりしか顔を合わせなかった人も、その後、親しい間柄になる人まで様々でしょう。どちらかと言えば、前者のほうが多いと思います。ただ、いずれにしても、いくつか衝撃的とも言える、記憶に残り続ける出会いというのも、誰しもあるのではないでしょうか。もちろん、それは人に対するものだけではなく、音楽においてもあることですよね。
 さて、今年の『LOUD PARK』。二日目のオープニング・アクトとしてGYZEが出演したことは、周知の事実だと思います。これまでの彼らの興行規模を考えても、おそらくあの会場でGYZEのパフォーマンスに初めて触れた人は多かったことでしょう。朝10時からの出番にもかかわらず、フロアにはかなりの観客が詰めかけていました。それはそのままGYZEに対する期待感の表れだったはずです。
 そこでバンドが何を見せたのか。すでにインターネット上では話題にされていますが、“最強のオープニング・アクト”といっても過言ではない、熱いライヴが披露されました。個人的には「きっと仕掛けるだろうな」とは思っていたとはいえ、午前中からウォール・オブ・デスが起こることなど、ほとんどのオーディエンスは予想もしていなかったと思います。メンバーが指示したところで、そのバンドのステージに魅力がなければ、ウォール・オブ・デスもサークル・ピットも生まれないわけですから、そう考えると、客観的にもあの日のGYZEの勇姿は間違いなくポジティヴな印象を各方面に与えたに違いありません。


 僕がGYZEのリーダーでもあるRyoji(vo&g)の存在を知ったのは、2009年の春ぐらいのことでした。当時、『YOUNG GUITAR』で彼のソロ・アルバム『Wyvern』がピックアップされていたんですね。数々の名ミュージシャンを輩出してきた札幌在住のギタリストというだけでも興味を惹かれましたが、ほどなくしてあるバンドの取材で赴いた札幌で、いつも行くすすきののロックバー<DerringeR>で、マスターのRyoさんから「今、売り出し中の若者なんだけど」とその場で聴かされたのが、その『Wyvern』でした。まだまだプレイに荒削りなところはありましたが、フレージングなどのセンスには、とても驚かされたのをよく覚えています。まさに期待の若手。そんな第一印象でした。
 そして、縁なのか何なのか、それから約一ヶ月半後、再び訪れた札幌で、偶然にもRyojiと直接出会ったのです。2009年5月17日、場所は現地のライヴハウス、札幌mole。僕はたまたまBLINDMANと木下昭仁バンド(事実上のSABER TIGER)の競演を観るためにそこにいたのですが、『Wyvern』のプロデュースをしていた小寺伸幸さん(ELIZA)から、Ryojiと弟のShuji(ds)を紹介されたのでした。GYZEの前身であるSUICIDE HEAVENが結成されたばかりの頃で、二人とも10代でしたね。
 Ryojiはまさか僕が彼のことを知っているとは思いもよらず、かなり緊張していたようですが、好きなバンドのことやら何やら、意外とすぐにいろんな話をしたような気がします。そこで重要だったのが、ヘヴィ・メタル・バンドとしてプロフェショナルな活動をしていきたいという彼の強い思いでした。若気の至りもあったかもしれません。でも、音楽面でのポテンシャルの高さだけでなく、その熱さには心を動かされるものがあったのです。そこで僕は、同月末に川崎・クラブチッタで開催されることになっていた、僕がオーガナイズを務めている『PURE ROCK JAPAN LIVE』(出演:陰陽座、GALNERYUS、SEX MACHINEGUNS、CONCERTO MOON)に、もし都合がついたら遊びにおいでよと軽い気持ちで誘ったんですね。とにかく、優れたバンドのライヴを直接体験して欲しいと思ったからなのですが、確かすぐに「行きます」との返答があってびっくりした記憶があります。そして当日、Ryojiは本当に来たのです。札幌から川崎にですよ。この行動力は本物だな、そう確信した瞬間でした。


 以降、彼とは比較的頻繁に連絡をとるようになっていきました。SUICIDE HEAVENも動き始めたばかりでしたので、活動と言っても札幌でライヴを行うぐらいでしたが、地元でも実力は早くから認められていたため、道外から遠征してくるツアー・バンドと共演する機会も少なくなかったようです。
 そこで地方都市を拠点とするバンドゆえの、ある種の限界も感じたのだと思いますが、東京に出てきて活動をしたいという相談を受けるようにもなりました。僕はしばらく「まだ早いんじゃないか」と諭していたんです。東京は確かにいろんなチャンスは多いでしょう。人口も多い分、ライヴでの動員数も地方の数倍にはなるかもしれません。ただ、ほとんどの上京バンドが直面するのが、日々の生活の問題なんです。アマチュア・バンドに潤沢な資金などあるはずもなく、当然、アルバイト生活に明け暮れることになります。夢の実現に向けては、そんなことは苦ではないと思いたいところですが、音楽をやりに来たはずが、いつの間にかそれ以外のことに追われることに葛藤する人は実際のところ少なくないのです。今や昔と比べれば、東京に拠点を移さずとも、充実した活動を行うことは可能になっている現実もあります。東京などに噂が届くぐらい、地元で強固な基盤を作ってからでも遅くはない、そう伝えたと思います。
 GYZEはどうだったかと言えば、思いの外、早く上京してくることにはなったのですが、実際に来てみると、思い描いていたような活動には程遠い日々を過ごすことになったのです。そこで一体どんなことがあったのか、Ryojiのブログを読むとわかりますが、とにかくしばらくの間、彼は心身ともに疲弊していくばかりでした。当時、僕は観客がほんの数名といったライヴも観ています。
 ただ、その一方で興味深かったのが、彼らの活動に手を貸そうとした人たちも多かったことなんです。バンドとして魅力的なのは大前提ですが、やはりメンバーの熱さが周囲の人を動かしたんですね。それは今も変わっていないと思います。決して器用に物事を運ぶ性格ではなく、むしろ逆のように思えるRyojiの武骨さや人間味。いや、もちろん、きちんとやるべきことはやる男ですが、その純粋さが訴えかけるものは、音楽にも反映されていることでしょう。



 挫折も味わいながらの数年間。イタリアのコロナー・レコーズと契約し、1stアルバム『FASCINATING VIOLENCE』(2013年)をリリースした辺りから、いろいろなことが好転していったように思います。言わずもがな、その間に紆余曲折はあるのですが、彼らが目指し、歩むところに道ができていったような印象があるんですよね。早くから「世界で活動するバンドになりたい」との思いを抱き、いつからかそれを具体化させてきたからこそ、ちょっとした障壁も乗り越えてきたのでしょう。ちなみに『FASCINATING VIOLENCE』がなかなか日本のレコード会社からリリースできなかったのは、要はスケジュール的に輸入盤が先に発売される関係上、国内盤のセールスが見込めないという予測の下で、各社が契約を留保したという事実があります。無論、GYZEの実力が認められなかったということではありません。


 話を『LOUD PARK』に戻しますが、GYZEは「自分たちが出演するまで観に行かない」という自身に課した決まりを頑なに守り続けていたんですよね。つまり、彼らにとっては、あの巨大なフェスティヴァルも夢物語ではなく、目標の一つに過ぎなかったとも言えます。願えば叶うものではありません。運がよかったのでもありません。彼らは達成に向けてやるべきことを、一つ一つ着実に積み上げてきたんですね。その直前に行われた、CHILDREN OF BODOMとの中国ツアー、台湾でのDRAGONFORCEとの共演なども同じことです。特に今年のGYZEは、自分たちのやりたいことを自らの手で次々と手繰り寄せていったように思います。強い政治力を発揮するマネジメントに所属しているわけでもありません。ほぼDIYでした。だからこそ、見逃せないのが、彼らを地道にサポートしたいと考える人が、各地でますます増えていることでしょう。
 『LOUD PARK』でのステージを終えた後、僕は舞台袖で彼らが戻ってくるのを待っていました。RyojiもShujiもArutaも、あの日のステージ同様に自信に満ちた笑顔だったんですよね。ライヴそのものも素晴らしく、バンドの黎明期から見届けてきたゆえに成長が感慨深かったですが、彼らの新たな歴史が始まった、そう思わされた場面でした。
 年内も公演予定はありますが、2016年の活動には、これまで以上の注目が集まると思います。まずは『BLACK BRIDE』(2015年)に続く3枚目のアルバムの制作を進めながら、水面下で様々な動きをしていくはずです。今後のGYZEの展開において、重要な局面が訪れるのは間違いなさそうです。


2015年10月31日
土屋京輔/KYOSUKE TSUCHIYA

GYZE

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GYZE - JULIUS [OFFICIAL MUSIC VIDEO] - YouTube

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GYZE 2nd Album「BLACK BRIDE」

GYZE 2nd Album「BLACK BRIDE」

GYZE 2nd Album「BLACK BRIDE」
2015年2月25日発売
VICL-64303 2,500円+税
<収録楽曲、クレジット>
1. BLACK BRIDE / ブラック・ブライド
2. IN GRIEF / イン・グリーフ
3. HONESTY / オネスティ
4. IN SANE BRAIN / インセイン・ブレイン
5. BLACK SHADOW / ブラック・シャドウ
6. WINTER BREATH / ウィンター・ブレス
7. TWILIGHT / トワイライト
8. SATANIC LOOP / サタニック・ループ
9. 菜の花(NANOHANA) / 菜の花
10. JULIUS / ユリウス
11. 明日への光(ASUHENOHIKARI) Inst. / 明日への光
12. GNOSIS(日本盤ボーナストラック)/ ノーシス
Produced by Ettore Rigotti & Ryoji
Recorded at Heavens Studio & S S M
Mixed and matered by Ettore Rigotti at The Metal House(Italy)
All Music and Lyrics are written by Ryoji
Guest Vocals by Ettore Rigotti(HONESTY)
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土屋京輔 土屋京輔