第4回:“新世界”への扉が開かれた夜——Nozomu Wakai’s DESTINIA(若井望)の場合

2018年11月14日 更新
第4回:“新世界”への扉が開かれた夜——Nozomu Wakai’s DESTINIA(若井望)の場合
記事公開日:2015/08/31

 2015年8月30日、東京・渋谷O-WEST。ギタリスト/コンポーザーである若井望のソロ・プロジェクト、Nozomu Wakai’s DESTINIAのファースト・ライヴが行われました。GALNERYUSの小野正利、IMPELLITTERIのロブ・ロック、LIGHT BRINGERのFuki、榊原ゆい、BLIZARDの寺沢功一、44MAGNUMの宮脇知史、LIGHT BRINGERのMao、さらにATOMIC TORNADOの小松優也がサポートすることが事前に発表になっていましたが、当日はスペシャル・ゲストとしてANTHEMの森川之雄も登場。これはファンには嬉しいサプライズだったことでしょう。アルバム同様の豪華ミュージシャンが奇跡的に揃った熱いパフォーマンス。チケットもソールド・アウトで、満員のオーディエンスの期待に充分に応える内容だったのではないかと思います。
 個人的な感覚で言えば、もう感無量というのか、ある種の達成感も覚えるようなものでした。それはなぜかと言えば、望と僕の関係にとても大きな理由があります。詳しくは昨年11月にリリースされたデビュー・アルバム『Requiem for a Scream』のライナーノーツをご一読いただければと思いますが、とにかく彼はもっと多くの人に認められるべき存在であると、かねてから思い続けていたからです。
 出会いは望が19歳のとき。おそらく目黒ライブステーションだったと思うのですが、彼がその当時に参加していたバンドのライヴを観る機会があったのです。以降も何度か足を運びつつも、あるインディー・レーベルからアルバムを発売してほどなくして解散。その後、望が森川之雄(vo/ANTHEM)率いるTHE POWERNUDEに加入したときに再会することになりました。
 そこからは脱退、再加入、脱退という道を辿った一方で、若井望は着実にソロ・ミュージシャンとしてのキャリアを積み上げていきました。時にはもちろんギタリストとして、時にはコンポーザーとして。いつの間にか、デザイナー/アートディレクターとしても活躍するようになり、多くの著名アーティストの作品に関わるようになっていったのは、ファンの方ならよくご存じでしょう。  ただ、彼が多方面から評価され、多忙な日々を送っているのを知れば知るほど、僕は同時に煮え切らない思いも抱くようになっていたのです。若井望はいわゆる“裏方”で終わるべき人材ではないと。実際、この7〜8年ほどは、本人と話をするたびに、「君はもっと表舞台に立つべきミュージシャンだ」と言い続けてきました。もしかしたら、望からはウザがられていたかもしれませんが(笑)。ですので、元Every Little Thingの五十嵐充(key)さんが立ち上げたRUSHMOREの一員としてデビューしたときには、とても嬉しかったんですね。しかし、ああいったプロジェクトの場合、レコード会社が期待するセールスに達しなければ、すぐさま活動が停滞してしまうという側面があります。残念ながら、バンドそのものは高く評価されながら、RUSHMOREは自然消滅のような形になってしまいました。
 そして若井望は先述した通り、再び裏方の仕事を以前にも増して多く手掛けるようになっていきます。最近になって思い出したのですが、RUSHMOREへの加入の連絡をもらった頃、別のプロジェクトにも関わっているという話があったんですね。それがPHANTASMでした。そう、Nozomu Wakai’s DESTINIAの作品にも参加している声優、榊原ゆいさんをフィーチュアしたバンドです。
 話が少し逸れましたが、望には大きな転機となる出来事がありました。僕も彼から事前には知らされてはいなかったのですが、2012年になり、リリースされたばかりの浜田麻里さんのアルバム『Legenda』を聴きながら、クレジットを見て驚いたのです。周知の通り、作編曲者として若井望が参加していたのでした。この制作に関わったことが一つのキッカケとなり、彼は自身のソロ作品を発表する決意を固めていったのです。

Nozomu Wakai’s DESTINIA

Nozomu Wakai’s DESTINIA

 2013年のある日、望から久しぶりの電話がありました。自分の大好きなヘヴィ・メタルにこだわったアルバムをリリースしたいと思っている、それに関して相談させてくれないか、と。デモを聴いた時点で、かなりのポテンシャルの高さを感じました。すでに正規のレコーディングも進行していて、その段階で森川之雄さん、寺沢功一さん(BLIZARD)、宮脇知史さん(44MAGNUM)らが参加。言わずもがな、自主制作でも何でも音源のリリース自体は可能なわけですが、これだけ名うてのミュージシャンが揃う作品だけに、望はいわゆるメジャー・レーベルからの発売を考えるようになったんですね。
 ファン的な目線で言えば、これだけ豪華な布陣なのだから、レコード契約など簡単なのではと思われそうですが、現実は違いました。大手数社が興味を示してくれましたが、なかなか具体的な話は進まなかったのです。その背景にあるのは、昨今のレコード販売不況。僕はアルバムの内容を含めて、「確実に売れる」と思っていたからこそ、音楽業界を取り巻く状況の厳しさを痛感しました。自分自身が仕事をしている業界ですから、当然、市場環境についてはわかっているつもりでしたが、現場レベルはここまでシビアにならざるを得ない段階にあるのかと……。
 優れたアーティストを世に送り出すのがレコード会社の使命の一つですが、ビジネス面とのバランスを考えるのも法人としては当たり前のことです。正直、一時は自主レーベルを立ち上げる案も出ました。そんな中、辛抱強く交渉を続ける中、キングレコード/ネクサス・レーベルとの契約が上手くまとまったわけです。
 2014年11月26日、ファースト・アルバム『Requiem for a Scream』は、ついにリリースとなりました。この作品がどれだけ話題になったか、改めて説明するまでもないでしょう。店頭では売り切れが続出し、初回プレスはあっという間になくなりました。現在もセールスは伸び続けています。僕はその頃、望に「『BURRN!』の読者人気投票で“Brightest Hope”に選ばれると思うよ」なんてことを言ったらしいのですが、他にもいろんな話をしていたゆえ、記憶にありません(笑)。実際にNozomu Wakai’s DESTINIAは“Brightest Hope”に選出されたのですが、そればかりか他の多くの部門でも上位にランキングされる躍進ぶり。常々、「表舞台に立つべきだ」と言い続けてきた立場でもあり、
これは心から嬉しい出来事でした。微力ながら、彼をサポートできてよかったなと。  この8月12日には『Anecdote of the Queens』がリリースされました。前作のコーラスを担当していた榊原ゆいとLIGHT BRINGERのFukiをメイン・ヴォーカルにフィーチュアしたミニ・アルバムです。本作の詳細については、『Barks』に掲載されたインタビュー(http://www.barks.jp/news/?id=1000118988)をご一読くださると、『Requiem for a Scream』との連関なども併せて、ご理解いただけると思います。

 さて、冒頭に記したNozomu Wakai’s DESTINIAとしての初ライヴ<「a Live for a Scream」~One Night Only Requiem~>。セットリストは以下の通りです。

●SETLIST(2015年8月30日=東京・渋谷O-WEST)
1. Requiem For A Scream
2. The Trigger
3. Breaking The Fire
4. No Surrender
5. Love To Love
6. Until That Time
7. I Miss You
8. Rock Is Gone
9. Bass Solo
10. Dearest Pain (Instrumental)
11. Still Burning
12. Despair Caprice
13. Believing〜Drum Solo
14. End My Sorrow
15. Sweet Vengeance
16. Fight To Win
*Encore1
17. Ready For Rock
*Encore2
18. Burn
 2枚の作品を再現するように、ヴォーカリストが適宜入れ替わるライヴでしたので、一貫した勢いある流れで惹き付けていくものとは違いますが、上手く構成されていたのではないかと思います。このオーダーを考えるのは、かなり大変だったに違いありませんが(笑)。
 若井望が書く曲は、いずれもキャッチーではあるのですが、演奏してみればよりわかるように、難易度はかなり高いんです。今回の敏腕陣もそう言うぐらいですしね。しかし、この記念すべき日に向けて、個々がタイトにプレイを磨き上げてきていたのはさすがでした。
 二度目のアンコールは「Burn」のセッションでした。有名な曲ですし、出演者ほぼ全員が揃ってのステージでしたので、客席フロアもかなりの盛り上がりでしたね。でも、ポイントはなぜこの曲だったのか? 単にこういった場面の定番曲だからという理由ではないのです。といっても、本人に確認をとったわけではないのですが、若井望がギターを始めたキッカケは、高校時代にDEEP PURPLEの楽曲を耳にしたことだったんですね。つまり、「Breaking The Fire」に導入したドヴォルザークの“新世界より”よろしく、未来を見つめるライヴであったのと同時に、彼はあの場で自身の原点も改めて刻み込んだということです。
 終演後、望とはNozomu Wakai’s DESTINIAの未来について話をしました。具体的に言えば、セカンド・アルバムのことです。日頃から曲作りは行っているため、現時点でもかなりのストックがあるようで、実際にレコーディングに入る頃には、より磨き上げられたマテリアルがセレクトされることになるでしょう。加えて、彼の心の中には、次作で実現したい思いが様々にあります。今回のライヴを成功裏に終えられたからこそ、再認識した理想もあります。スケジュールはまだまだ白紙の状態ですが、何らかの音源がそう遠くない将来に届けられるのを期待したいものです。
2015年8月30日
土屋京輔/KYOSUKE TSUCHIYA

Nozomu Wakai’s DESTINIA最新音源情報

Nozomu Wakai’s DESTINIA / A...

Nozomu Wakai’s DESTINIA / Anecdote of the Queens

アーティスト/タイトル:Nozomu Wakai’s DESTINIA/Anecdote of the Queens
フォーマット:CD
レーベル:キング/ネクサス
品番:KICS-3209
価格:2,400円(税抜)
2015年8月12日発売

<収録曲>
1. Breaking The Fire
2. I Miss You
3. Love To Love
4. Until That Time
5. No Surrender
6. Rock Is Gone
7. Breaking The Fire (feat. ROB ROCK)

「Requiem for a Scream」/Nozomu Wakai's DESTINIA - YouTube

2014年11月26日発売 Nozomu Wakai's DESTINIA デビュー・アルバム「Requiem for a Scream」 日本のメタルシーンから多大な影響を受けているギタリスト、若井望が自身のヘヴィ・メ­タルの理想郷を体現すべく立ち上げたメタル・プロジェクト、Nozomu Wakai's DES...