第八回:真夏の恐怖物語

2015年10月5日 更新
第八回:真夏の恐怖物語
記事公開日:2015/07/22

夏です。お暑うございます。
よく、「そんだけ太っていると、年中暑いんでしょ?」とおっしゃる方がおりますが、実は太っている人がみんな暑がりかってえと、そうとは限りません。
脂肪は冷えやすいので、むしろ冷え性の人も多いのです。
石ちゃんこと石塚英彦は、真冬のロケでは汗をかいているように見せる為にシュッと霧吹きをするんだとか。で、それをバラしたのはあの炎上ママタレント、辻希美なんてぇ申します。
と、雰囲気だけ落語っぽい感じでスタートしてみましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
今回は暑気払いのためにも一つ、身の毛もよだつ怖い話に一席お付き合いいただきとうございます。
題して、「黒いドレスと深夜のトイレ」。
如何にもって感じでしょ?
ライター活動を中断していた時期、とある中小ブラック企業に勤めていたことがあったのですが、その際に知り合ったMさんという女性がご結婚されたというので、ある日、別の友人2人でお祝いがてら会いに行くことにしました。
当時、社長がゴミ箱に直接吐いた痰を片付けさせられるなどの屈辱を味わいながら暗黒のアラサー期を過ごしていた我々でしたが、現在は3人とも結婚し、あの時のことを笑い話にしながら酒を酌み交わせることに、腹の底から幸せを感じたのです。
そんな中、突然Mさんが、「ねえ、GO-BANG’Sって知ってる?」と聞いてきました。
ご存じの方も多くいらっしゃると思いますが、GO-BANG’Sは80~90年代初期に活躍した3ピース・ガールズバンドで、「あいにきてI・NEED・YOU」や「スペシャルボーイフレンド」などのヒット曲で有名。
しかし、それらヒット曲はテレビやチャート用であり、アルバム収録曲などはもっとエグいのよ、と彼女は言います。
10代の頃このバンドにハマっていたMさんは、MD(時代ですな~)で「私的GO-BANG’Sベスト」を作っていたそうなのですが、時代と共に自宅でMDを聴けるプレイヤーがなくなってしまい、唯一聴くことが出来る車にしばらく放置していたのだそうです。
で、最近車の掃除をしていた時にそのMDが発見されたので、久々に聴いてみたところ、若い頃には理解出来なかった歌詞の奥深さに気が付いた、とのこと。
中でも印象深かったのが「ピンクのドレス」という曲の歌詞の話でした。
恋人に「君はピンクが一番似合うよ」と言われてから、ドレスや口紅、マニキュアなどピンクばかりを身に着けていた。しかし、ある日悪魔が現れて、「私」に黒いドレスをあずけた。私はそれを着て、一度だけ過ちを犯す。
その夜、私が帰った2人の部屋には誰もおらず、かわりに彼の死を知らせる一報が。
放心状態の黒いドレスを着た私、それを見て笑う悪魔…。
彼の葬式には、みんな黒い喪服で現れる。
だから、あなたに見つけてもらいやすいように、私はピンクのドレスで会いに行くわ。
ピンクのドレスの私を、迎えに来て…。
「うわ~っ!鳥肌立った!!」と顔を見合せる私と友人。
Mさんは続けました。「確かにちょっと怖い感じなんだけど、要は、旦那に何か良くないことが訪れた時、自分がした悪い事の報いが彼に来てしまったんじゃないか、って考えるようになったんだよね。だから、旦那の為にも悪いことは出来ないなって…」
さすが新婚!ごちそうサマンサ。
Mさんの惚気に気分をよくしながら帰宅し、リビングで寛ぐ私。
深夜の1時過ぎ、静かな夜でした。
早速GO-BANG’Sの現状などをググりつつスマホを眺めていると、視界の端に、何やら気配を感じたいのです。
人ではない、しかし圧倒的な存在感…。
「も、もしや黒いドレスの女が?!」
ふと己の肩越しに目をやると、そこには紛れもなく、黒いドレスを纏ったアイツが、ソファの片隅に鎮座していたのです!!
「ひ…ヒャッ!!」と小さく悲鳴をあげる私。
毛穴が総動員して立ち上がりました。
いや、正確には、ちょっと茶色いドレスでした。
そして、女がどうかは不明です。出来れば男、いやオスであって欲しい!卵産まないでー!!!
そう、寝ている人の口へ水分を吸いに来たり、髪の毛1本を食して何週間も生き延びてみたり、頭を取ってもなかなか死なないあのモンスター、頭文字(イニシャル)Gですよ!
スプレーで果敢にアタックしている私を見るなり、風呂から上がったばかりの夫が丸めた新聞紙で一撃!
ヤツとの対決は、あっさり済んだかに見えました。
しかし!大変だったのはその後。
メスは今際の際に卵を産むので、確実に始末する為、トイレに流すのが星川家のやり方なのですが、なんとそのせいでトイレが詰まり、水が逆流してきたのです!
最近のトイレは節水設計なので詰まりやすいんだとか。聞いてないよーーー!!
トイレの個室を突っ切って廊下まで流れる汚水を、夫と2人で汗だくになって掃除。
再び風呂に入り、結局眠りについたのは朝4時…翌日、いやもう明けて当日、会議で早朝出勤予定だった夫から、ヒシヒシと伝わってくる無言の怒りが一番恐怖でした。
おしまい。
お分かりいただけただろうか。
そう、私がゴキブリを流してトイレを詰まらせるという過ちを犯したせいで、夫が寝不足で会社へ行くという部分、Mさんが言う、「私のした悪行の報いが旦那にくる」という現象ではありませんか!
つまり、何の因果か「ピンクのドレス」の歌詞とリンクしているのです!
怖いな~なんかやだな~悲惨だな~。
えっ?分からなかった?では、もう一度ご覧いただ…いや、やっぱりいいです。すみませんでした。
ここまでは長いマクラってことで、続いてこんなお話はどうでしょう?
「ピンクのドレス」に登場した「私」は、ただ一度の過ちを彼の死によって激しく後悔することとなりましたが、こちらは多くの男性に求められる快感に溺れてしまった、悲しきアイドルの物語。
私の友人Aとそのご主人には、家の近くに行きつけのカフェがあり、そこのバリスタ兼バーテン、モモちゃん(仮名)は、常連の男性たちから高い人気を博していました。
モモちゃんは、東南アジアを一人旅したり、野外フェスを楽しんだり、スパイスやジャムなどニッチな食材にこだわったりしそうな感じの女性(伝わるかな、この感じ)で、ナチュラル系の男好きするタイプ。
自らを「バリスタアイドル」と名乗り、彼女を目当てに店を訪れるご近所さんも結構多かったのだとか。
ある日、Aが店の常連客だった男性、林さん(仮名)と道端で偶然出くわしたところ、いきなりこんなことを言われたそうです。
「Aちゃん、離婚しそうなんだって?大丈夫??」
確かに、最近ちょっと互いに仕事が忙しく、すれ違いになっていたけど、もう仲直りしているし離婚は大袈裟!
ていうか、何故林さんがそんなことを?と驚くAでしたが、詳しく話を聞くと…。
まず前提として、モモちゃんは、周囲に内緒で林さんとお付き合いしておりました。
しかも、同時に他の常連客と二股もしており、更にワンナイトスタンドは余罪多数。
「お相手の部屋に行って抱きつく」というストレート過ぎる落とし方で、男性常連客を次々手篭めにしてきたんだとか。
そして、男性側が食いついて来なかった場合、「あの人にストーカーされている」という噂を流すなど、自分に恥をかかせた男を潰すことも忘れない、とんだ枕営業アイドルだったわけです。
これは、既にモモちゃんと別れた林さんと、ストーカー扱いされた男性らの証言により明らかになったことだそう。
で、ここからが本題。
林さん曰く、A夫が1人でお店に来た際、酔った勢いで「カミさんと最近うまくいかず、どうしていいか分からない」的なことを漏らしていたんだとか。
勿論、林さんもそれは伝聞であり、情報源はモモちゃんです。
妻も常連として通う店で家庭の愚痴を言うのはルール違反。A夫は軽率だったと言わざるを得ません。
とはいえ、店員であるモモちゃんが、率先して客の話をよそに漏らすのは言語道断!
特にお酒を出す店は、愚痴を吐くことを目的に来るお客さんだって多いでしょうし、それを聞くのも仕事であり、プロならば、恋人にだって漏らしちゃいけないはず。
現に、林さんに話したことで、Aの耳に入ってしまっているのです。
しかも、話は単なる愚痴から離婚疑惑へと誇張されています。
果たして、何故モモちゃんは、林さんにこんなことを言ったのか、ただの世間話として、単にポロッとこぼしてしまったのでしょうか。
いいえ、Aには思い当たる節がありました。
少し前に、A夫がモモちゃんの郷里に出張することがあったのですが、その時にモモちゃんからA夫へ「私もその時期に里帰りするんです。よかったら、美味しいお店紹介しますから、夜ごはんでもどうですか?」と連絡があったそうなのです。
後にそのやり取りは、モモちゃん自身が周囲に触れ回ったことでAの知るところとなり、夫婦は大喧嘩に。
結局密会(?)は実現しておらず、2人も仲直りと相成ったのですが、その後、Aが店を訪れた際、モモちゃんから「私のせいで喧嘩させてごめんなさい。そんなつもりじゃなくて…」と謝られたそうです。
Aは、「そのことはもう夫婦で片付いてるからあなたは関係ないし、気にしないで。私も勘違いして嫉妬しちゃったけど、旦那もモモちゃんのこと何とも思ってないって言ってたから」と答えたんだとか。
モモちゃんの胸中は穏やかじゃなかったでしょう。
確かに、「そんなつもり=浮気」ではなかったかもしれません。
もう皆さんお気づきのことと思いますが、彼女の目的は、A夫との浮気を「疑われること」で、周囲の男たちの自分を巡る闘争心と、Aのジェラシーに火を点け、自己愛を満たすことなのです。
しかし、A夫はモモちゃんへの好意も浮気もキッパリと否定、Aからは「部外者」扱いされてしまいました。
当然、Aもわざとそういう言い方をしているのですが、カフェのアイドルとして多くの男性を虜にしてきた彼女のプライドはズタズタです。
そう、彼女は自分を拒否した男性をストーカーに仕立て上げたように、まずはA夫を、夫婦の不仲を公の場で吹聴する酷いヤツとして陥れ、それをAの耳にも入るように、ちょっぴりおしゃべりな林さんにも話を大きくして伝えたのです。
まるで「妻だからって余裕気取ってないで、私は傷つきました!って、みっともなくメソメソ泣いてみろよ!」と挑発するかのように…。
しかし…というか、当然のことでしょうが、人の口に戸は立てられません。
モモちゃんの身持ちの悪さは少しずつ常連たちに広まってしまいます。
そしてつい最近、「他所で自分の店をやる」と、彼女は町を去っていきました。
もともと独立は決まっていたことのようでしたが、その際、林さんにも二股の相手にも関係を切られ、モモちゃん目当てに店を訪れていた常連客も、誰一人引き止めたり追いかけたりすることはなかったそうです。
三十路を過ぎたバリスタアイドル、哀愁の末路。
「カフェとその常連客」、という一見オシャレなワードに潜む、田舎の町内会もビックリの伝達力を有する「村社会」的コミュニティー。
その狭い世界で、男たちの賞賛を一身に受け、女たちを嫉妬させることでそのナルシシズムを満たそうとしたアイドルは、結局は己のことしか愛せず、そして誰からも心底愛されることがないまま、姿を消していったのです。
大都会東京において、横溝正史的情景を感じさせます。嘘だけど。
以上、真夏の恐怖物語、いかがでしたでしょうか。
いわゆる怪談話ではなくて、がっかりさせてしまったかもしれません。
メタラーはホラー好きが多いですからね、韻踏んでるし。
ですが、おばけやら幽霊やらに遭遇するより怖いのは、人から存在を忘れられ、自分が幽霊のようになってしまうことなのではないか、と私は思うのです。
そう、孤独は人を、生きながらにして亡者にするのです。



ちなみに我が家、ダ○キンに毒餌をばら撒いてもらったので、今は快適です。

JURASSIC JADE / 天の咎 –THE B.Y.S. YEARS 1997~1998

 (1059)

BHT-045
CD価格:2,500円(税抜)
2012/3/07発売


※1985年、HIZUMI(Vo)、NOB(G)がHAYA(Dr)を誘い結成。2001年よりGEORGE(G)が加入し、現在のメンバーとなる。本作は、B.Y.S RECORDSからリリースされた彼らの代表作「AFTER KILLING MAM」と「ドク・ユメ・スペルマ」をリマスターし、カップリングしたもの。2000~2004年にHOWLING BULL RECORDSからリリースされたアルバムを1枚にまとめた「地の仇花 –THE HOWLING BULL YEARS 2000~2004」と同時に発売されている。

<収録曲>
1.
2. After Killing Mam
3. 血が出るまで
4. Midnight Child
5. Chaos Queen
6. No Man Never Die
7.
8. Gashing
9. この橋を渡れ
10. 微量原子分裂
11. 紅い砂漠
12.
13. 異邦人
14. Chaos King Of O
15. ドク・ユメ・スペルマ
16. 香港庭園
17. Unborn Child
18. Can Your Bird Sing?
19. 最後の祭り
20. After Killing Mam(Dual Hatred Version)
21. Chaos Queen(2012 Version)
22. ドク・ユメ・スペルマ(2012 Version)