第四回ゲスト:齋藤靖氏(株式会社ディスクユニオン・お茶の水HARD ROCK/HEAVY METAL館店長 / B.T.H. RECORDS)× 荒金良介氏(音楽ライター)

2015年10月22日 更新
第四回ゲスト:齋藤靖氏(株式会社ディスクユニオン・お茶の水HARD ROCK/HEAVY METAL館店長 / B.T.H. RECORDS)× 荒金良介氏(音楽ライター)
記事公開日:2015/10/22

Metallization.jp企画会議 第四回目

Metallization.jp企画会議 第四回目

L to R:
齋藤靖(株式会社ディスクユニオン・お茶の水HARD ROCK/HEAVY METAL館店長 / B.T.H. RECORDS),荒金良介(音楽ライター), 小川(Metallization.jp事務局), 別府伸朗

地方に住んでいましたが、頭の中は完全に東京タイムでした。(荒金)

別府:お二人が音楽やヘヴィメタルに触れる様になった切っ掛けを教えてください。

齋藤:中学二年生位の時に戻りますが、横浜に住んでましてTVK(テレビ神奈川)を見ることが出来たのですね。TVKで「ミュージックトマト」という番組を夕方にやってまして、そこでAC/DCが流れたのですよ。半ズボンでランドセルを背負って頭を振っているおかしな人間がギターを弾いている。PVだったかな?それでビックリして。それで当時あったレンタルレコード屋で借りてきたのが最初です。一番最初の洋楽の入口はAC/DCだったので「ハードロック=洋楽」だと思っていました。AC/DCから入って、KISSとかJUDAS PRIESTとかも聴くようになって、それにミュージックライフといった本も読むようになって。本を読むようになるとロックって色々なものがあるらしいと知るようになって、JAPANとかを借りて聴いてみると全然違っていて。(JAPANがあまり好みでなく)ハードロックの方面によりのめり込んでいった感じですね。情報源はTVとMUSIC LIFEで、まだBURRN!も無かったからMUSIC LIFE(※1)が一番濃かったですね。それでレコードを借りてきたり、お年玉で買ったりでした。

シンコー・ミュージック(創刊当時は新興音楽出版社)が編集・発行した音楽雑誌。主に洋楽を取り上げた。1998年12月号をもって休刊
※1
荒金: 僕は音楽を聴き始めたのが遅くて、中学まで殆ど聴いていなくて。ベストテンものは普通に見てたりはして、洋楽でもMADONNAは良いなと聴いていた位でした。高校生になって、こういったハードロックやヘヴィメタルを聴くようになった切っ掛けは漫画でした。それが「ジョジョの奇妙な冒険」という漫画で、ジャストの世代だったので始まりから週刊少年ジャンプで読んでいました。その中で“エシディシ”とか“ツェペリ”とか出てきて興味を持って、それで作者の荒木飛呂彦さんがあとがきで「LED ZEPPELINがカッコイイ」といったことを書かれていて。そこからLED ZEPPELINを知って、一枚ずつオリジナルアルバムを買い揃えて。それで一番最初に買ったのが何気なく手に取った「PRESENCE」で、今でもそれが一番好きなアルバムで最高傑作だと思います。それがハードロックの入口になって、DEEP PURPLE、OZZY OSBOURNE、BON JOVI、DEF LEPPARDと広がっていきました。

齋藤:レコードですか?

荒金: もうCDですね。お店に行ってもレコードが無かったかと。

別府:輸入盤は縦長の箱に入って(※2)CDが売られていた時代ですかね?齋藤さんはレコード世代ですよね。

輸入盤は縦長の箱に入って

輸入盤は縦長の箱に入って

※2
齋藤:CDが出てきた時は高校生でした。高校生になるとバイトができてお小遣いが増えて、レコードを買いに行って、その思い出の方が多いですかね。アニメとか除いて一番最初に買ったレコードはKISSの3rdでした。というのもKISSのレコードを借りにレンタル屋に行ってもいつ無くて。どうしても聴きたくて、お年玉を手に買いに行きました(笑)。タワーレコードが多かったかな?西新宿に通うのはもっと後だし。CDで出ていてもレコードを買っていて、18~20歳の間位でCDの購入枚数が逆転しました。

別府:住んでいる場所も情報を得るのに関係していましたか?僕も都会ではなかったので、ネット環境が整備されている現在とは違って苦労しました。専門誌も本屋にそれほど並んでいなかったし、ラジオとTVが情報源で。まず中古盤屋の存在というのを東京に行った時に初めて知ってビックリした位ですから。僕の話でスイマセンが、中学の時とか試験勉強で徹夜してTVつけたらやっていたのが「HEDBANGERS BALL」とか「PURE ROCK」とかで、やかましいと思いながら見ていた覚えがあります。ピンときたのがその時は洋楽TOP40ものでした。

齋藤:当時はMTV全盛でしたかね。

荒金: 僕は九州の大分出身だったので「BEST HIT USA」(テレビ番組)しかなかったですね。ノートをとりながら見てましたよ。

齋藤:そんなこともしたな、ビデオデッキも無かったから。段々と思い出してきた(笑)。

別府:週刊FM(雑誌)を買ってエアチェックしたりもしていましたよね。

齋藤:僕が中高生の頃は、今ではNGですが、レコードを丸々一枚かけてしまう番組とかもありましたよ。

別府:海外のバンドを聴く切っ掛けは分りましたが、日本のヘヴィメタルを聴くようになったのは?

齋藤:中学の時にAC/DCが切っ掛けとは話しましたが、周りは既に聴いている友達がいて。その中にパンクのヤツもいたし、ニューウェーブのヤツもいたし。アナーキーとかRCサクセッションとかを聴いているヤツもいて、そんな中だったからか、洋楽とか邦楽とか意識しないでいました。LOUDNESSを聴かせてもらったりして、日本にもヘヴィメタルのバンドがいるんだって。洋楽だから聴く、邦楽だから聴くということはしていなかったですね。全体的にも「ヘヴィメタルだから」という意識も薄くて、ヘヴィメタルっぽいのが好きなのですが、それ以外でも好きなものも多くて。そういったことを考えると、ギターがハードなものを好んでいたのかなと。

別府:そうなるとたまたま耳に入ってきたのが好きで、それが日本のアーティストだったり海外のアーティストだったりしたわけですね。

齋藤:そうですね、周りに雑多にいたので。高校生の頃になってMTVがドカンと放送されて、そこで洋楽嗜好が強くなったかもしれない。(ヘヴィメタルに偏るようになったのは)スラッシュメタルが高校三年生になって流行りだしたからかも。SLAYERやMETALLICAが出てきて、これは凄いなと思っていて。日本でもこれは凄いなと思ったバンドに似たものが出てくるのですよ。OUTRAGEですよ。そこからかもね、本当に日本のバンドを意識し始めたのは。

別府:国内のバンドのライブもその辺りから行き始めたのですか?

齋藤:そうかな?X-RAYとか行ってましたね。関内にライブハウスがあって、そこに行ってました。海外のバンドはもう少し前に見てましたね。専門学校に行っていたのですが、高校の時よりも激しいヤツが出てくるんですよ。ハードコア聴いていたり。それがイカ天の頃だったかな?その頃には屋根裏、EXPLOSIONやロフトとかにも足を運んで、CASBAHやJURASSIC JADEを見ていました。

別府:荒金さんが日本のバンドを見始めたのは?大分だとライブハウスも少なかったのでは?

荒金: 行く発想も無かったです。一番最初にライブを見たのが東京ドームでやったGUNS N’ ROSESのUSE YOUR ILLUSION TOUR、確か91年だったかと。高校三年の時に飛行機に乗って行きました。

齋藤:九州だとめんたいロックの土壌がありましたよね?そういう環境はありました?

荒金: 洋楽一辺倒でしたし。日本のバンドを聴くようになったのはOUTRAGEですかね。BURRN!やMETAL GEARといった雑誌を読んでLOUDNESSとかは聴いていたのですが、リアルタイムで衝撃を受けてライブを見て体感して日本のバンドも凄いんだなと思ったのがOUTRAGE。で、知ったのも遅かったのですが「THE FINAL DAY」でした。

別府:「THE FINAL DAY」が入口の人は多いですよね。

荒金: それが20歳位で、大学生の頃。それでガツンとやられて旧譜を買って追いかけていきました。それでライブの次の日に首が痛くて痛くて仕方ないって思いもしました。

齋藤:OUTRAGEのミニアルバムが出た時って、他にも色々とソノシートや7epを出しているバンドが多くて、西新宿にはそれを取り扱う店がたくさんあって、入るのに恐くて勇気がいるマンションで営業している店も多かったな(笑)。

別府:けっこうありましたよね、マンションの一室でやっている店って。今では本当に少なくなりましたが。

齋藤:●○はまだあるのですかね?来日アーティストがよく行っていた。

荒金:荒金:まだあるのですか?

別府:ありますよ、かなり■□に侵食されて、取扱商品も幅広くなっていますが。ああいったものを取り扱う店だとネットとかにかなりやられちゃっているんじゃないですか?

齋藤:そうだよね、もう時代が違うのかも。

別府:荒金さんは東京に出てきたのは音楽の仕事がしたかったからですか?

荒金: 本当にそれだけです。東京とか関東に住んでいる人が羨ましくて、羨ましくて。土曜日のパワーロックトゥデイが始まる時間には頭が痛くなっていたし、日曜のヘヴィメタルサウンドハウスではみんな楽しく踊っているんだろうなって。地方に住んでいましたが、頭の中は完全に東京タイムでした。パワーロックトゥデイは録音して送ってくれる人がいたので、タイムロスはありましたが聴くことができました。とにかくハングリーでしたよ。今の子はPCがあれば何でも見ることも聴く事もできるじゃないですか。羨ましいし、恵まれていると思いますよ。

別府:齋藤さんはこの中では一番恵まれた環境だったかもですね。

齋藤:横浜と言ったって田舎の山の中だよ(笑)。

別府:それでもハマっ子じゃないですか(笑)。僕らからしたら横浜というだけで凄い都会ですよ。

齋藤:でも最寄の駅まで歩いて30分だよ、そんな横浜無いでしょ(一同爆笑)。

別府:横浜って広いんですね(笑)。お二人から比べると、僕は中途半端な距離に住んでいましたね。

齋藤:微妙な距離ですよね。環境は横浜とそんなに変わらないでしょ?

別府:いや、やっぱり違いますよ。やっぱり田舎でおじいちゃんおばあちゃんやっている様な本屋でしたから、そういったところにはBURRN!ですら並んでませんでしたから。DOLLなんかもっと大きな本屋でも無かったし。高校で隣の大きな市に通うようになってBURRN!は知りましたから。バンドやっているヤツは中学の時からいて、そういう友達からGASTUNKといった単語は耳に入ってきてましたけど。SABBRABELLSは従兄弟のウチに行ったらムー(※3)か何かオカルト雑誌が置いてあって、そこに特集記事が出ていて知っていたんですよ。高校の部活の帰りにライブハウスの横を通ったら、SABBRABELLSって書いてあって「こんなところでやっているんだ。でも帰らないと」って(一同笑)。今、振り返ると見とけば良かったなって。

齋藤:UFOやら何やらオカルトブームだったからムーはBURRN!よりも一般的に知られていたかもね(一同爆笑)

ムー

ムー

※3

SABBRABELLSは従兄弟のウチに行ったらムーか何かオカルト雑誌が置いてあって、そこに特集記事が出ていて知っていたんですよ。
別府:話は飛びますが大学に入って僕と荒金さんがサークルで知り合うんですよね。そのサークルにはSPIRITUAL BEASTのMさんもいたし。

齋藤:濃いな~。

荒金: 僕が伊藤政則さんの講演に行った時に勧誘のチラシを配っていて、それを見てそこの大学生でもなかったのに入りました。メタルの友達も欲しかったし。

別府:あんまり活動らしい活動はやってなかったけど(苦笑)。

荒金:荒金:飲み会とかライブ行ったり、冊子も作ってましたね。そこで書いたりもしましたね。

別府:冊子作ってたけど、もう覚えていないですね。そんなに僕は積極的に参加もしていなかったし。サークルに顔出すよりもライブに行く方が好きだったから。今振り返ると本当に申し訳ないけど(笑)。

荒金:そんなに話をした記憶もないですね。ライブでチラっと見かける方が多かったかもしれないですね。

これを「やる」と決めたからにはやれると思っていたから。(荒金)

別府:話がかなり脱線した感じですが、それぞれ音楽に関わった仕事をしていますが、そういった仕事に入る切っ掛けを教えていただけますか?

齋藤:音楽が好きだったから、音楽に触れる仕事がいいなと思った時にレコード屋が一番早いかなと思って。僕が20歳位の時はレコード屋の情報というのがラジオよりも何よりも早かったのですよ。ラジオでオンエアされるよりも前に新譜が店頭に並んでいましたしね。それでレコード屋に入りました。それで今の会社に入ったのは国内盤、輸入盤、中古盤があっって、一番面白みがあるかなと。一番行っていた店がDISK UNIONだったし。BURRN!に求人広告が出ていて、それで電話しました。それが24~5年前ですね(笑)。他の職種は考えていなかったですね、ネクタイをする自分の姿を思い浮かべることが出来なかったし。そうなると仕事も限られてくる(笑)。情報が早くて音楽を聴く側からすると羨ましい環境にあると思ったしのもあって。だからレコード会社ではなかったのですよ。行けるわけなかったし(笑)。

別府:舞台製作とかイベンターとか裏方は選択肢に無かったのですか?

齋藤:そうでもなかったんですよ。バンドのPAみたいなことも考えたこともあったけど、自分が音楽の仕事と考えたこととその世界は違っていたんだよね。ライターであれば文章が書けなかったし、写真も撮れなかったし。今は必要に駆られて書くこともあるけど、基本苦手なんですよ。なるべくタッチしない方がいいなと(笑)。思い入れが強ければ強いほど、文章って難しいと思っていて。100%の思い入れが文章になると20%位になってしまう感じがして、それもイヤだったし。

別府:荒金さんはそういった文章を書くことを仕事にしていますが。

荒金: 僕は国語が大嫌いだったんですよ。でも大学生の時に何になるのか凄く考えて、漠然と音楽に関わる仕事はしたいなと考えていて。それでライターになる切っ掛けとなったのは伊藤政則さんのライナーノーツですかね。それを読んで言葉に感動して、自分が聴いて感動した音楽を伝えられる人になりたいなと思って。一番最初に書いたのがイギリスのMARILLIONの「BRAVE」アルバム来日ツアーレポートで、BURRN!に送ったら掲載されました。当時、岡山の大学に通っていて大阪まで見に行ったのですが、そのライブが素晴らしくて感動して書いたんですよね。今、振り返ると伊藤政則さんまんまの恥ずかしい文章なんですけどね、「静と動が~」とか(笑)。その時はそれが精一杯で、そこから徐々にメタルのミニコミ誌とかに書き始める様になりました。

別府:ミニコミに書いたり投稿だったりが出発点ですが、そういった「書く」ことで食べていくことを本格的に意識し始めたのは?

荒金: 「やっていけるかな」とか「大丈夫かな」とかは考えたことは無いですね。これを「やる」と決めたからにはやれると思っていたから。東京に出てきて最初の頃はアルバイトをしていたのですが、自分のやりたいことを始めなくちゃって手当たりしだいに音楽雑誌を見て、自分が書きたいと思った雑誌の編集部に片っ端から電話をしました。原稿も何も無かったので持ち込まず挨拶に行ってという営業から始めて、徐々に仕事が入っていきました。迷いは無かったですね。当然最初はそれだけでやっていけないから、アルバイトもやりながらで。それが徐々に逆転していって、ライター一本でやるようになりました。あんまり迷ったりとか、後ろを振り返ったりは無かったですね。これで食えるんだって思ってました。

小川:そう思える人はなかなかいないと思いますよ。

荒金: そう思わないとできないんだろうなって。

別府:荒金さんって最初DOLLで書いてることが多かった印象があるのですよ。DOLLでは山嵐とかラウド系のインタビューをよくやっていましたよね。広告が多くて、一番売れていた頃だったかなと。

荒金: 広告が半分位入っていた時ですかね。僕は山嵐でしたからね。山嵐が切っ掛けでライターになった位に好きでしたから。日本のインディーズ/ラウド/パンクがカッコイイと思って、自分の気持ちが入ったのが当時メガフォースから出ていた山嵐、マイナーリーグ、バックドロップボム、麻波25とかですね。

齋藤:凄いよね、文章で食べていくって。その発想が無いからね、これで食べられるんだって。

小川:特に若い時にね。人生が決まっていく年齢じゃないですか。

荒金: これで食えていくとか全然考えてなかったですね。好きなことをやろうってだけで。大学生の頃から好きなことをやって後からお金がついてくることをしたいと思っていて。仕事なんて何をやっても大変だし、だったら好きなことをやっていこうって。今も仕事って感覚は無いですね。

齋藤:フリーでずっとやられているわけですよね。書き手としてどこかに所属しているわけでなくて、独立してやっているというのが凄いですね。どこかの編集部に入ろうって考えたことは無かったのですか?

荒金:編集部に入っていたことは過去にはありますよ。ライターとして関わっていて、編集部に来ないかって2回位話がありました。それには入ったんですけど・・・。

別府:音楽のライターって原稿料が他の業種のライターに比べると安いって言われているじゃないですか。

小川:仕事上ライターさんに頼むことがあったのですが、広告業界のコピーライターさんとかはかなりお金がいいんですよね。こんなにちょっとしか書いてないのに、こんなに貰えるのって。

荒金: 僕は知らないのですが、そんなにいいのですか?そんな世界があるんですね(一同笑)。

別府:ライターの◎◎さんにも話をしたことがあるのですが、その人は音楽以外でも書いていてそちらの方がギャラが高いって話してましたね。音楽ライターって昔は結構憧れている人も多かったと思うのですよね。

奥中:今は某音楽専門学校にもライター養成の専攻学科が無いですから。

荒金: 専門学校でもライター科が無いというのがショックですね。

別府:大御所ライターの●●●さんとかライター養成講座ってやってましたよね。今はそれがあるのか知らないですが。

奥中:某専門学校の話に戻りますが、Metallization.jpを立ち上げの頃、若くチャレンジしたい音楽ライターを探してますってご協力をお願いしたことがあるんです。音楽のWebプロモーション関連の制作専攻学科でなら授業の一環としてそのWebコンテンツの一部のためのライティングの授業はあるとお聞きしました。

荒金: 今でも潜在的に音楽ライターをやりたいって子はいると思うんですけどね。

別府:そういう子って今はネットでBlog書いているんじゃないですかね。

齋藤:そういうネットの世界を構築しちゃっているんじゃないですかね。

荒金: 皆最初から文章が上手いし。

齋藤:荒金さんは書いていて「ここで『俺』というものが確立されたな」って感覚はありますか?

荒金: 未だに無いですね。何でもそうだと思うのですが、自分の文体を確立できるのって難しいと思います。文章を読んだだけで名前が頭に浮かぶ様な。そういった人って凄いなと思います。自分はまだその領域まで到達していないです。

小川:ものを書く人で大御所の方々ってデビューが遅かったりする人が多いですよね。サラリーマンをやっていたけど書くのが好きで、40歳を過ぎてから賞を取ったりとか。そういった意味でいくと、荒金さんみたいな人がそんな様に感じているとすれば、書き手として自分の文体が出来上がるのはまだまだ先になりそうですね。

齋藤:ライターで食べていこうとなって、勝負していこうとなった時に自分の持ち味や武器のせめぎ合いになると思うのですよ。それがあって、荒金さんが今に至っていると思ったのですが。これを書かせたら誰にも負けないとか。

荒金: そういったのは無いんですよね。自分でこれを書いたら誰にも負けないと思っていても、結局編集者が見る目だと思いますから。自分にその仕事が来るとも限らないし。今日は取材できて手ごたえがあっても、次回は別の人に仕事が振られたりとかよくありますからね。そうなると、これでは誰にも負けないとか思えないですね。

齋藤:それはフリーの厳しいところですね。でも、荒金さんはそこを乗り越えているから食べていけると思いますよ。

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別府:逆にフリーだと嫌な仕事もこなさないといけない時があるのではないですか?

荒金: 最初の頃は自分が興味を持てなかったり、聴いていなかったアーティストのものは偉そうに断っていましたよ(一同笑)。僕は別に興味が無いのでとか言って。でもずっとライターでやっていく内に、例えば自分の大好きなアーティストやアルバムでも、それに見合う最高のインタビューが取れたり最高の文章が書けるかと言えば、そうとも限らないと思うのですよ。

別府:好きなことをやるということで音楽ライターという職業を選んだのに、興味の無い文章を書くことでジレンマを感じたりはありませんか?そこは上手く変換している感じですか?

荒金: 音楽ライターの括りって決まっているので、その人に合わせたものや似た色の依頼が来ると思うのですよ。

齋藤:インタビューをやっていて興味の無いアーティストに質問をして思ってもいなかった返しが来た時に、いくつか質問を用意していても対応できなかったりとかありますか?そしてその話で盛り上がったりとかもありますよね。

荒金: インタビューした後に好きになったりもありますし、音源の聴き方もそうなると変わりますね。

齋藤:そういうことだったんだってなりますよね。

別府:逆に好きなアーティストにインタビューしてスイングしなくて、やっていて苦痛を感じたことはありませんか?僕はありますよ(一同爆笑)。

荒金:気持ちが空回りして良くなかったインタビューも沢山ありますよ。

小川:ファンですよね、音楽ライターの人って。ファン代表と思ってます。

齋藤:こういう音楽を糧にしている人たちって何となく共通項があるじゃないですか。なかなかお金を生み出すのも難しいし。

別府:それは仕方ないかなと。そう思わないとやっていけないし。

齋藤:お金にならないことで動くことが多いんですよ。それはライターさんでも、ライブハウスもそうなんじゃないかと。最低限のところはお金を取るけど。

別府:僕はそれでいいと思います。そういう人たちは他に仕事を持っているし、そういう姿を見ているから。だったら僕もそれでいいと。お金が発生したらそれは勿論嬉しいけど、お金が発生しなくてもちゃんと楽しく納得できれば、それでいいって考え方です。誰かが喜んでくれたらそれが報酬。メジャーさんのアーティストだって、それだけで食べていける人は限られているし。

齋藤:食べていくってことは難しいですよ。

色々とやっていくと繋がるんですよね、シーンも狭いし、人脈もできていくんですよね。(齋藤)

別府:齋藤さんはレコード屋に入って、今はレーベル業務もやっているじゃないですか。レーベルを始めた切っ掛けはなんだったのですか?

齋藤:この会社に入って、ヘヴィメタルの担当になったんですよ。ウチの会社は社員となると何かしらジャンルの担当になるかというのがあって。それがジャズだったりクラシックだったり。僕は社員になって初めて関わってくれた上司に鍛えられて育ててもらって。その人が自分のやりたいことがあったら何でもやればいいってスタンスだったんですよ。その時にOUTRAGEの自主制作のビデオがあったでしょ、あれを店で売らせてくださいって手紙を出して。CASBAHのデモテープの時も仕入れをしたくて手紙を書いて。元々そういったことがあって、それから後にレーベルをやりたいって言ったんですよ、新入社員なのに。その時は会社的にはジャズのレーベル位しかなくて、パンクのレーベルもできたばかりだったんじゃないかな。パンクができるならヘヴィメタルでもレーベルができるんじゃないかなと思って。まぁ、その時はパンクバブルの頃でしたが(笑)。そこまで行く(レーベルを作る)のに時間がかかったんですよね。一社員からチーフになって店長になって、店も色々と10年やって営業部にバイヤーとして行ったんですよ。その時に何をどこから始めていいのか分らなかったんですよ。何をしようかと思った時に五人一首の話が出てきたんですよ。当時の上司がANEKDOTEN(※3)というバンドに力をいれていて。

アネクドテン(Anekdoten、アネクドーテン)は、スウェーデンのプログレッシブ・ロックバンドである。 メンバーは、ギター・ボーカルのNicklas Berg, チェロ・メロトロンのAnna Sofi Dahlberg、ベース・ボーカルのJan Erik Liljestrom、ドラムのPeter Nordinの四人構成である。
彼らは70年代のプログレッシブ・ロック、特に同時期のキング・クリムゾンに影響を受けており、全ての楽曲でメロトロンを用いている。
※3
別府:ANEKDOTENはディスクユニオンのレーベルからCDをリリースしていますよね。

齋藤:そうですね。それでANEKDOTENの来日公演のオープニングアクトを五人一首に依頼したんですよ。その頃、五人一首は自分たちの五人一首商店という自主レーベルからCDをリリースしていたんですよ。そのレーベルとディスクユニオンは取引がありました。その時はオープニングアクトの話は実現しなかったのですが、それが切っ掛けでリリースの話になって。上司にはレーベルをやりたいって話は知っていたから、五人一首をやったらいいじゃんと言われて。それでレーベル業務を始めました。「こうやってレーベルって始まるんだ」ってその時は思いましたよ。元々レーベルはやりたいって言っていたからやっとできたと思って。でも何をやっていいのかっていうのは分らなかったですね(笑)。そこから試行錯誤が色々と始まるわけですよ。好きでやっていたけど、人脈があるわけではなかったし。五人一首の次に何をやろうかってなった時に、CASBAHとJURASSIC JADEにいったんですよね。その時もお手紙を書きました(一同笑)。JURASSIC JADEはお店にジョージさんがフライヤーを持ってきてくれたことがあって、それをツテに長谷川さんとヒズミさんに会って話をして。リアルタイムでJURASSIC JADEは活動していたから話はし易かったですね。逆にCASBAHは動いていなかったから、羽鳥さんの住所をOUTRAGEの丹下さんからきいたのですよ。それで連絡先をきいて、こちらもお手紙を書いて(一同爆笑)。

別府:メールじゃないんですね(笑)。

齋藤:それでこういったことでリリースを考えているんですけど、いかがでしょうかって書いて。それでたまたまだったのかな、やってもいいかなってなったのは。

奥中:その時ってオーストラリアに羽鳥さんはいらっしゃったのでしたっけ?

齋藤:行く前ですね。それで西船橋の方に行って話をして、JURASSIC JADEの(過去の音源の)リリースを考えているのですがCASBAHもどうですかって話をして。そこから自分のやりたいことをやっていこうかなって思って。それで考えるとコアなジャンルになるんですよね。所謂「ジャパメタ」と呼ばれる日本人のヘヴィメタルのシーンの中でも、売れ筋のバンドって言ったら語弊があるかもですが、今で言えば「嬢メタル」、昔から根強い人気があるのは様式美系のバンド、そういったものは日本人に受け入れやすいんですよ。だけどそういったバンドは当時からつながりのあるところがあるし。そうなるとそこではないなと思って。自分の好きなものということもあってコアなところなんだろうなと。色々とやっていくと繋がるんですよね、シーンも狭いし、人脈もできていくんですよね。紹介もありますよね、元CEMMENTのメンバーがやっていたCONCRETE EXPERIENCEのリリースもそうでしたし。その経由でOGREもやったし。ライブを見に行って決めたのはDIRTY THIRTYでした。

別府:実は僕が齋藤さんと深い付き合いになったのはZADKIELですよね。JURASSIC JADEの取材の時にその話をしたんじゃないかと。

齋藤:実はそれを思い出せないんですよ。多分、こういった深いお付き合いになったのはZADKIELなのは間違いないんですけど。未発表のビデオを始め色々と借りたじゃないですか、その時にコメントを貰って話もしているんですよね。でもその前ですよね?

別府:JURASSIC JADEがキーですけどね。彼らからライターの行川さんだったり、齋藤さんを紹介していただいてますから。当時僕はカバラってファンジンで書いていて、ZADKIELの特集をやったりしていたから。その時に音源をどこからか出せないかなって話になって、それで齋藤さんに話をしたんじゃないかと。

齋藤:そこももう覚えてないんだよね(笑)。カタログナンバーで言えば5番だよね、4番がCASBAHのDVDで。実はカバラを読んでZADKIELを次にやりたかったんだけど何もツテが無かったんだよね。

別府:ZADKIELをどこかリリースしてくれるところはないかなってJURASSIC JADEの長谷川さんに相談したら齋藤さんを紹介してくれたんですよ。それがJURASSIC JADEの企画、目黒のライブステーションでのBEHIND YOKE SYSTEMの時でしたね。こんな内輪の話ばっかりしていいのかどうか(笑)。

小川:世に出ない情報がいっぱいあるからいいですよ(笑)。

齋藤:出ても一部の人が笑う位じゃないですか(一同爆笑)。

奥中:Metallization.jpでインタビューをやったBAT CAVEにしても兀突骨にしても、齋藤さんを紹介してもらってリリースの話になったとお聞きしたので、こういうところが大事だと思っていました。

齋藤:狭いからどうしても繋がってしまうんですよね。JURASSIC JADEのライナーを頼むのに長谷川さんに相談したら行川さんを紹介してもらって。

別府:齋藤さんってレーベルをやり始めた頃と今ではCDの売り上げも違っているんじゃないですか?昔は1,000枚が壁と言われていたけど段々落ちて500枚が壁と言われるようになって。

齋藤:まだレーベルを始めた頃は1,000枚くらいでしたね。その後ドンドンと落ちていって・・・

別府:今はもっと落ちて500枚でもインディーズなら売れているって感覚じゃないですか。

奥中:でも10年経って500枚しか落ちてないってことはマーケットがそれだけ小さいってことですよね。

齋藤:元々小さい上にね。そんなに目減ってはいないんだけど、そこに新しい層が入って来ていないという実感があります。今は「ラウド」って大きな括りがあるでしょ。ヘヴィメタルの要素もあるし、パンクっぽいところもあるし。DIR EN GREYになればヴィジュアル系みたいなところもあるし。ラウドっていう括りは大きいけど、その中の細かなジャンルの壁は厚いんですよ。僕が育ってきた20〜30年前の世代ってハードロックやパンクがあっても、その中では壁も薄くて色々と聴いて育ってきた世代だと思うんですよ。今は例えばDIR EN GREYならDIR EN GREY、それが極端としてもメタルコアならメタルコアだけ感じになっている風に取れるんですよ。そうなるとなかなか広がらないかなって。

別府:ルーツを掘り下げて聴いている感じもあまりなさそうですよね。その時代時代の流行には強いんですけどね。

齋藤:ある時代のピンポイントは強いんですよ。レコード店員よりも詳しい時も多いです。僕は今、店舗にいるのですが凄く細かい質問とかも来るんですよ、ピンポイントで。

別府:ヘヴィメタルなら、その歴史を順に追っている人って少なくなっているのかなって。BLACK SABBATHやLED ZEPPELINが70年代に活躍して、80年代にIRON MAIDENが出てきてみたいな流れを順に追っていったり、ルーツを掘り下げていったりがあまりされていない感じがあります。細かなジャンルのその時代の掘り下げは凄いんですよね、例えばメロスピなら全世界ドマイナーなものまで知ってたりして。

荒金: マニアック化しているんですよね。

齋藤:今、これだけネットが発達していると何でも見ることも聴くことができますよね。そうなるとそこを掘っていき易いのかなって。僕らの世代がやっていた様にレンタルレコード屋やレコード店に行かなくてもいいし、ラジオをエアチェックしなくてもいいし。今は365日24時間、自分の聴きたいところにスポッて入れる環境にあるから。その環境は凄いですよね、地方も関係ないからね。

荒金: そうですね、もう関係無いですからね。

別府:このピンポイントでマニアックな感じって日本人特有な感じもするのですが。僕の知っている外国のファンってピンポイントも凄く深いんですけど横の広がりもあって。日本はヘヴィメタルって結局輸入されたものだから本当は根っこまで行ってないのかなって。欧米はロックがあってそれから色々と派生していって。子供の頃からそういった環境だから根っこまでガッチリ食いついていると思うのですが。日本は子供の頃はそんなにロックとか聴ける環境って少ないのかなって、歌謡曲とかアイドルの方が触れる機会が多いだろうし。

荒金: 両親が両方ともロックやヘヴィメタルが好きというなら話は別ですけど。

齋藤:それは少ないだろうね。

荒金: 海外の人は子供の頃からロックが普通に家で流れていたりしますからね。それは大きいですよね。

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齋藤:僕は店にいて思うのですが、お客さんの年齢層が上がっているのですよ、ヘヴィメタルでメインのね。30歳半ばから40歳前半がメインかな。その層って結婚してお子さんがいてというのが多いですよね。そこでやっとロックが根付くのかなって思いがあるのですよ。LED ZEPPELINとか70年代の音楽を聴いていた人はもうおじいちゃんになっていて、その子供たちがJUDAS PRIESTとか聴いていてきて、その子供がやっと出てきた。海外で言えばKISSで三世代で聴く、そういう環境になりつつあるのかなって。それでもロック人口は少ないと思いますが。

小川:僕も何でこんな活動をしたいのかというと、もしかしたら荒金さんと近いのかなと。10代の頃に聴いて育ってきた文化だから。それが消えるはずも無いと思うし、ヘヴィメタルで考えたらまだ30~40年しか経ってない文化なんですよ。それだとまだ根付くはずは無いと思っているし、続けていけば広まって根付いていくと思うんですよ。クラッシックやジャズと同じ様に育っていくんじゃないかなと。

齋藤:ロック自体が100年経っていないですからね。その後に出てきた派生ジャンルのプログレ、ヘヴィメタル、パンクetc、もっと後だから、80歳のおじいちゃんが「若い頃にDEEP PURPLEを見に行ったんだよね」と孫に昔話をする様になったら今と違ってくるかもしれないしね。

小川:僕らがこういう話をすべきなんですよ(笑)。

齋藤:音楽ってさっきも出ましたが、文化じゃないですか。僕も常に思うんですが、音楽を商売にしてしまうので常にその葛藤はあるのですが、自分の好き嫌いを抜きに売れる売れないでやっていかなくてはいけない。そこで好き嫌いと文化として考えた時の悩みがあるんですね。難しいですよね。僕は音楽も映画も小説サブカルも全部ひっくるめて文化だったんじゃないかなと、それぞれの繋がりも深かったと思えるし。IRON MAIDENが何かの小説を元に曲を作って、それが自然で「ああなるほどな」と思える。今はそういうのが希薄かなと思う時もあります。

ちょっと前はディレクターにあたる人たちがヘヴィメタル世代だったんだよね。(齋藤)

別府:今の人ってどれ位ロックって聴いているんですかね。

齋藤:意外と聴いていると思うよ。

荒金:邦楽でお腹がいっぱいなのかもしれないですよ。

別府:今の若い子ってダンスにいっていると思うのですよ。学校の授業でもダンスの授業があるし、音楽と紐付けされたものでなくダンスって1つに確立されて。

小川:ダンスをやっている子は多いですね。

奥中:ダンスは楽器を買いそろえたりする必要がないからそんなにお金が掛からないでしょうからね。

齋藤:それは次の世代の新しいカルチャーなんだよね。僕たちは音楽を聴いて演奏していたりライブに行ったりしたけど、今の世代は音楽を聴いて踊るんだよね。

奥中:ダンサーさんとヴィジュアル系アーティストと組んで新しいプロジェクトを立ち上げたようですよ。それでヴィジュアル系のダンサーを売り出そうとしているみたいなんですよね。

齋藤:それは新しいね(笑)。

奥中:新しいけど「えっ、そこなの?ビジュアル系ってバンドでしょ、楽器持ってナンボ」って我々考えてしまう世代なんですかね。

齋藤:それは上が見えるじゃない、EXILEかもしれないっていう。EXILEってダンスをお金に変換することができた人たちだし。それを見たら「ああ、僕たちもそうなれるんだ」って思えるじゃない。それは違う意味で言ったらもしかしたらジャニーズJrかもしれないし。

奥中:我々の若い時代にヒップホップ文化が入ってきて流行っていて、その世代が親になっているんですよね。

別府:親になっているし、裏方や仕掛けの側にもいると思いますよ。

齋藤:ちょっと前はディレクターにあたる人たちがヘヴィメタル世代だったんだよね。そろそろヒップホップ世代になって、仕掛けとかもそういったものが多くなったんじゃないかなと。

小川:そうなると頑張らないと。

齋藤:今でも若い世代で熱い思いでヘヴィメタルとかやっている人も一部でいると思うよ。Hell Yeah!! Wasedaがそれになるのかどうかは分らないけど、音楽を純粋な好きでやっている人がいると思うんだよね。

小川:僕はスラッシュドミネーションに行くと、若い世代にも伝わっているのかなって思います。あそこは色々な世代の人が集まっているなと感じます。でもラウドパークに来る若者とは少し違う気がする。若い子がいるんですけど、ヘヴィメタルが好きで来ているのと違う印象を受ける時があるんですよ。

齋藤:お祭りだからですかね。

別府:スラッシュドミネーションでも若い人は来てますけど、昔のスラッシュメタル全盛期みたいなものは無いかなと。比べちゃだめですけどね。演っている方も見ている方も歳取ったなって(一同爆笑)。

奥中:メタルコアを聴いている子たちはスラッシュドミネーションにも行くんですよね。どうして、ジャンルがクロスオーバーしていかないんでしょうね。それが不思議に思うんですよ。同じ様な音で演っていると思うのですが。それを見ていて歯がゆく感じる時もあるし。

別府:それはやっぱりさっき話した様にみんなピンポイントに目が向いているからじゃないんですか。海外では若い子だけどもう渋いロック聴いている子がいると思えば、年齢は高いのにメタルコアが大好きって先輩格の人もいるし。ずっと流れで追っていてこのジャンルがハマったからここは深く聴いてみようって感じだからじゃないですか。

齋藤:海外のお客さんでおじさんが結構メタルコア聴いてたりするね。

奥中:盤を買うってことは既に高尚な趣味になっているであろう、というと購買者は収入の高い世代なんだろうという時代なんですよね。

齋藤:世界的に盤としてのメディアが売れないと言われているけど、買おうって思う人たちはいるんだよね。

奥中:それはコレクターの人たち対象なんですよね。

齋藤:やり方はあると思いますけど。「握手」とかね、同じものでも3パターンで出してみたりとか。そこで水増しされるでしょ。そうですね、今は音楽にお金を払うものではなくなっている部分もあるのかなと。お金を払わなくてもタダで手に入るという認識。

別府:でもそうなると齋藤さんの商売って・・・(苦笑)。

齋藤:例えばKISSは新譜を出さなくてもツアーをやれば儲かるじゃない。ビッグなバンドであればマーチャンって方法もあるし。マーチャンを売るバンドって多いじゃないですか、盤を出すからツアーすると思うけど、今は昔と意味合いが違っている部分もあるかなって。

奥中:盤を作ってもリクープできず赤字になる時もありますしね。既に流通網が成熟してインディーズでも全国も網羅できていますし。

齋藤:インディーズレーベルが育てるじゃないですけど、大きくなってメジャーに行くって図式だったじゃないですか。海外も日本でも。ハウリングブルがメジャーかどうかは別として、日本でハウリングブルって大きなレーベルがあってそこで売れて別に行ったりがあったでしょ。海外のレーベルに発掘されてメジャーに行くこともあったでしょ。

別府:あえてメジャーに行かないアーティストもいるじゃないですか。インディーでやっている方が収入が高くて自由度も高いからとか。

齋藤:何か指図されることもないですからね。

別府:CDの売り上げで考えると、CDの売り上げ枚数よりもライブでの入場人数の方が多い時がありますからね。

齋藤:KISSが新譜を出さない理由がそこですよ。極端な理由で言うと、ウォールマートからリリースして流通をそこに任せるんですよ。メジャーが作って各方面にディストリビューションするのではなくて、スーパーマーケットや家電店に任せて。当時、これは頭良いなと思いましたよ。販売店ごとに色というか特典を付けてというのもやって。彼らはツアーでお金を稼げるから、新譜を作るのに力入れなくてもいいんだよね。そうなるとミュージックビジネスのやり方が変わっていく。

小川:何かしら商売ということで出てくるとは思うんですよね。でも音楽そのものはぶれていない。

齋藤:そこをやる場合は変わらないんですけど、そこをお金にしなくちゃいけないんで。大好きでやりたいけど、数字がこうなんだよねとなると上手くいかない。インディーズレーベルになるとそこが常に理由になってくる。

小川:後はそこでバランス感覚がちゃんとある人がやっていればいいんですけど、そうじゃない人が出てくると崩れるのかなと思います。

齋藤:そうするとやりたいなと思うことが出来なくなってきてしまう。それがもどかしいですよね。

奥中:かつてはインディーズバブルがあってそこで一山当てたその人たちが贅沢な暮らしをしていたかと言えばそうでもないし。一部の賢い人が印税などの資金を元に上手く商売を始めたケースもあって、知恵をつけた人が生き抜いていける環境になったのかもしれないですね。夢に向かってひたすらもがいているアーティストは今も昔も変わらない印象ですよ。

特にヨーロッパではそういった日本のバンドの知名度って本当に高いんですよ。(別府)

齋藤:それじゃ海外にって話になるかもだけど、日本の海外進出って難しいよね。

荒金: 今だとCROSSFAITH、coldrainとかいますよね。前に比べたら多くはなったかと思います。彼らは海外に行くことが特別ではなくて、北海道に散歩しに行く感覚だって。それが新鮮だし凄く良いと思います。

齋藤:そう思えるのは素晴らしいね。海外進出を考えると単純にコストが高いんですよ。ツアーをするにしても盤を売るにしても、見える利益が少ないじゃないですか。そうなるとなかなか海外のレーベルも動いてくれない。オランダのバンドがドイツのレーベルと契約してヨーロッパをツアーするということと、日本のバンドがドイツのレーベルと契約してヨーロッパをツアーするというのは全然違うことなんですよ。

別府:荒金さんの話していたCROSSFAITH、coldrainは向こうでツアーしてどれ位のお客さんが入っていますか?

荒金: どうなんでしょうね。

別府:フェスティバルには出ているというのは知っていて盛り上がっているのも見ていたのですが。ぶっちゃけ某日本の有名なバンドが向こうでツアーしている映像を見たのですが、クラブハウスツアーみたいな感じで入ってはいるけど満員ではない風には見えて。

奥中:ケースバイケースですよね。公演する土地の土壌もあるんだろうし。ただ欧米はクラブハウスでもショウフィーが事前にきちんと提示されるようですから。

荒金: CROSSFAITHは40ヶ国も回っているし、去年はイギリスでヘッドライナーツアーしたりもしてますから。キャパで言えば1,000人クラスのところでもやっていますから。フェスにも出たりして結果も残していますよね。

別府:それだったら十分にやっていけてるんでしょうね。1,000人って凄いと思いますよ。

齋藤:キレ者が付いてるよね。その人が行動力があるんですよね。

 (7687)

別府:僕はそういったバンドの海外ツアー事情っていうのは知らなくてもっとアンダーグラウンドな感じのバンドの情報なら耳に入ってくるんですけどね。CHURCH OF MISERY、SABBAT、ABIGAIL、COFFINSとか。

齋藤:SABBATは海外からのリリースアイテムが凄いよね。そういったバンドだともっとD.I.Y.な感じですよね。

別府:そうですね。でも日本でやるよりも全然ギャラは良いと思いますよ。海外を拠点にしたいって考えのあるバンドもいるみたいですし。ピンポイントで日本に帰ってくる感じのスタイルにして。

齋藤:そういう方法論もあるよね。

別府:海外のヘヴィメタルのコミュニティ、特にヨーロッパではそういった日本のバンドの知名度って本当に高いんですよ。アメリカとイギリスのバンドは別格としても、同じヨーロッパ諸国のバンドよりも日本のバンドの人気の方が高いかなって感じることもあって。フェスを見ても日本のバンドのシャツを着ている人がチラホラいますからね。

齋藤:そこまで行くまでが難しいよね。

別府:さっき話しに出たCROSSFAITHとは海外の進出の方法が違いますよね。どちらのケースもこれから海外進出するバンドの参考になるのか分らないけど。

齋藤:考えちゃうよね。

お客さんがいるけどやっぱり5年前も10年前も顔ぶれはそんなに変わらない感じ。(別府)

別府:今まで出ていた話で明るい話題ってそんなに無い感じなんですが、そうなると5年後、10年後ってどうなっているんだろうって思ってしまうのですが。

齋藤:極端に広がることも狭くなることもないのかなって、下手するとずっと横ばい。

奥中:若いバンドってどうなんでしょうね。

齋藤:交流が無いだけなんじゃないですかね。

奥中:若いメタルコアのバンドはいるんですけどね。音を聴けばスラッシュやデス系との対バン交流はありと思うんですけどね。

別府:例えば日本のスラッシュメタルで言えば、UNITEDがいて90年代に交流があったバンドが沢山いたじゃないですか。ヘヴィメタルよりもどちらかと言えばハードコアのフィールドでやっていた様な。今はどうなのかと見てみるとそのバンドはそのバンドでまたちょっと離れた感じでコミュニティを作っている感じがするんですよ。バンドは一緒にやる機会が全く無くなったというわけではないんですが、お客さんが固まっていて。お客さんはそのままそこに留まっていて、5年前も10年前も顔ぶれはそんなに変わらない感じがして。

齋藤:それはあるね。

別府:でも他のシーンを見ても、そのシーンはシーンでお客さんがいるけどやっぱり5年前も10年前も顔ぶれはそんなに変わらない感じ。アイツまだいるんだって思うこともしょっちゅうだし。僕もそう思われていると思うけど(笑)。

奥中:DOOMが復活出演したイベント(VIOLENT ATTITUDE)に行った時に、GYZEのTシャツを着た子が最前列にいたんですよ。そういった光景を見ると、かたやジャンルが細分化されているとはいえ、バンド側の年代隔たりなくライブに足を運ぶ子はいるのに、かたやライブを作る側の現場やお客さんのコミュニティではではそうでないのか。

小川:もう今は昔と違って情報源が多いから、どこでキャッチするかも関係しているからね。

齋藤:でもTシャツを着ているってことはGYZEを知っていてライブに行っている可能性がかなり高いよね。そういった人もこのライブに来るんだというのは追えるよね。

別府:バンドやシーンだけでなく裏方も皆年齢が高くなっていますよね。前に話にでたライターも若い人は出てこないしで。レーベルにしてもどんどん数が減っていって、やっている人も昔からいた人が名前を変えたりしてやっていのもあるし。

齋藤:メタルコアをメインとしているレーベルがいくつかあるけど、そこは若い人がやっているよね。その人たちって会ったことはないけど30代前半だったと思います。どんな波かは分らないけど。メタルコアに続くその次の波を若い人が生み出してくれたらなって。

そういったことが切っ掛けで、ヘヴィメタルの世界に入ってくれたらね。(荒金)

別府:次のトレンドは何でしょうね?

齋藤:嬢メタルもメタルコアも落ち着いたし。

荒金: BABYMETALでしょ。

別府:となるとダンスとヘヴィメタルの融合ですかね。ヘヴィメタルと関係ないところからも盛り上がっているし。

齋藤:でもあれは上手い戦略の一つですよね。

別府:そう言えばこの企画対談で毎回BABYMETALの話題が出ますね(笑)。もうBABYMETALは僕の中ではもう良い悪い全部含めて超越しちゃってます。最初はネガティブに思っていましたけど、もうそれを遥か彼方、マッハで飛び越えましたから。曲がキャッチーで覚えやすいのは強いですよ。僕はライブ2回見た位で覚えちゃいましたから。人気も大人から子供まで巻き込んでるし。

齋藤:ももクロもそうだよね。好きでも嫌いでもないけど、KISSと一緒にやったでしょ、あれは凄いよ。KISSまで行き着く人はなかなかいないよ。それをやったことは本当に凄いよ。

別府:怒っちゃう人の気持ちも分るけど、でもそこまで行っちゃったんだってのがあります。

荒金:そういったことが切っ掛けで、ヘヴィメタルの世界に入ってくれたらね。80年代みたいにBON JOVIを切っ掛けに入ってきた様にね。BABYMETALを嫌いな人の気持ちも分りますけど、BABYMETALの存在で今までヘヴィメタルを聴いていなかった人が聴く様になったって話はききますからね。30代~40代の人がBABYMETALをきっかけにJUDAS PRIESTやIRON MAIDENを聴く様になったって話はありますから。そうやって間口を広げる役割はしているのかなって。

齋藤:単純に凄いよね。幕張メッセや武道館でライブをやっちゃうんだから。中学生、高校生の年齢でですよ。

別府:仕掛けが本当に上手いし、よくそこを見つけたなって思います。

齋藤:「ベビーメタル」って言っちゃってるからね。

別府:MEGADETHもMETALLICAもJUDAS PRIESTもネタに使われましたからね。本人たちがヘヴィメタルを知っているかですが。

奥中:結局仕掛け人がメタル世代なんですよね。

別府:それで今までタブーに近かったこともネタで使ってるところも頭が良いなって。

齋藤:何でヘヴィメタルに注目するのって、その要素がこれまでの芸能界ってなかったじゃない。マーティー・フリードマン位で。そこに何で「ベビー」「メタル」って言っちゃったのかなってのは最初思っていた。

別府:「メロイックサイン」じゃなくて、「きつね」だし。

齋藤:発想の転換が凄いよね。

荒金: 見せ方が面白いですよね。因みにイギリスで5,000人の会場がソールドアウトで、現地行くと大合唱ですからね。完全にヘヴィメタルバンドとして認められている感じでした。

別府:でも海外でも賛否両論ありますよね。昔からのヘヴィメタル好きな人にとっては異質なもので思うことがあるだろうし。

どの世界でも子供を巻き込むって難しいと思いますから。(別府)

奥中:昔からのヘヴィメタル好きな人はどういった若いバンドなら喜ぶんでしょうね。

別府:今で言うとENFORCERみたいなバンドじゃないですか。トラディショナルなガチガチの正統派ヘヴィメタルを若いアーティストがやっていて。オールドスクールなデニム&レザーのメタルギアに身を包んでいて、ヘッドバンギングが似合うヘヴィメタルのファンが聴いたら分りやすい音楽性で。そういったバンドは賞賛されるんじゃないですか、ヨーロッパでも人気あるし。濃い人ばかりが集まっていた海外のフェスだったので、もしかしたら微妙なのかもですが、凄い人気でしたよ、若者人気もあったし。若者が見てもああいったバンドはカッコイイって見ることができると思ったし。ちょっと上のお兄さんがカッコよく見える感覚に近いんですかね。

小川:分かりやすいのは重要ですね。

齋藤:ENFORCERはドストライクだよね。それは俺たちがそういったトラディショナルなヘヴィメタルを聴いてきたから分るけど、それを若い世代の人も巻き込んでいるのは凄いと思う。でも日本では海外と同じ様に若者からシンパシーに近い人気が出ているのかなって。昔からヘヴィメタルを聴いている人からの支持が日本ではあると感じるよ。

別府:若い子を巻き込むってのはこれからのことを考えると重要ですよね。どの世界でも子供を巻き込むって難しいと思いますから。そういった意味ではBABYMETALは子供まで巻き込んでいるから凄いと思いますよ。BABYMETALを見て、ああいった風に踊りたいとか、ステージに立ちたいって思う子供って多いと思うんですよ。カワイイだけでなくそういった子供たちからすれば、大人をバックにしているからカッコイイって見ている部分もあるだろうし。女の子だけど、もしあれが男の子だったらそうなるのかなと思うし。

奥中:ももクロ男の子版みたいな踊るアイドルが出てきましたよ。

齋藤:ヘヴィメタルで踊るって感じのものは昔もあったよ。

別府:BABYMETALは年齢も低いじゃないですか、ロリコン的な部分もね。全世界がロリコン化しているところもあるから。日本の女の子アニメ文化が「KAWAII」ってのと一緒になって、全世界に広がっていると思うし。エロ業界でも海外って昔と違って、「MOE」とか「KAWAII」文化が入ってきて巨乳だけじゃなく、貧乳系の華奢な子も出てきてますから。詳しくは知らないけど(笑)。メイドさんとかコスプレしたりしている人もいるし、そういったものも追い風になったのかなって。嬢メタルはもっと上な感じで、キャバクラっぽいイメージがあって。

齋藤:それは多分ヘヴィメタルを好きな人がやっている人がメタルをやっているのと、バックをヘヴィメタルで固めてフロントはヘヴィメタルを知らない子で固めた違いだと思う。だからシーンも膨らみもある程度までいったけど、BABYMETALには成りえなかった。

小川:嬢メタルだったら海外にも言っちゃえば元々いますからね。

奥中:嬢メタルをやっている全員が全員ではないと思いますが、そのバンドのキーマンはヘヴィメタルを通ってますよね。

別府:でも、今はそんなシーンがあるかどうかだけど見に行った時に思ったのは、この人たちはブームに乗りたいんだろうなってのがいましたよ。バックにいる人に組まされた感ありありのバンドとか。

奥中:仕掛けている人たちって、メンバーが抜けた時にスカウトしに音楽専門学校に行くこともあるみたいです。

別府:そうなるとバンドじゃなくて「ユニット」ですよね。

齋藤:バンドって自己表現で自然発生的にできると思うから、そうなるとイマイチのめり込めないんですよ。そうでないところがもどかしいんですよ。

奥中:泥臭い女性メンバーのバンドって出てこないんですかね。

齋藤:いるけど、そこはミニマムなんだろうね。

音楽が不況って言われているなかで事業をやって拡大させていってるんだから。(齋藤)

別府:何か明るい話って少ないですね。レーベルはどうですか?

奥中:メーカーがフィジカルの盤から撤退するんじゃないかって話も耳にしたことがあります。だからってデジタルダウンロードのが利ざやがいいかって話もあまり聞かないし。ストリーミングも盛んになりつつありますからね。

齋藤:一番良いのは著作権商売だよね。

奥中:例えば同一アーティストの同一タイトルの作品で3ヴァージョン作らなければリクープしないものがある。それってコアなファン1人が3枚買うってことですよね。握手券然り、そうやって実績を伸ばす商売って「本来はどうなの?音楽って文化なのに」と理想だけを考えれば実売枚数が多くの方の耳に届いていないじゃないかと思うこともあります。この10何年間で音楽の価値観って変わってきたと思う。昔は買ったり借りたりしないと経験として手にできなかったものが、今ではどうやっても手に入ってしまいますからね。

別府:それを考えると音楽の媒体も変わってきていますよね。新しい雑誌が生まれてはいますけど、廃刊や休刊も多いですし。これはネットジンですけど、どうやって見せてお金を生み出していくのかって考えていかないととは思うのですが。

齋藤:媒体が違うだけで、書く場所が沢山あるってことですよね。そうなるとライターさんには良い状況なんですかね。

別府:コストが違うからかもね。印刷のコストがまずかからないから。

小川:コストが低いから、その分緩さが出てきているのかもしれませんね。

齋藤:差益分岐点は低いのかもしれないね。でも事務所があってレーベルがあってとなると必要最低限のお金はかかって、お金を生み出さないといけないでしょうね。

荒金: それだけってのはあんまり無いでしょうね。

小川:仕事しながらミュージシャンやっているのと一緒だと思います。

別府:名前出して良いのかですが、激ロックさんはアパレルもやっていてますよね。ロックバーもやっていて音楽を総合的に上手くお金にしていますよね。

齋藤:「激ロック」っていうものをブランド化しましたから。

小川:尖がったファッションが好きな子も多いですから。

別府:固定のファンもシーンもできてると思うし。

齋藤:地方で激ロックのイベントをやるとイベント明けにグッズとか音源が売れるんだって。なるほどな、そこまで影響があって凄いと思う。

奥中:最初はNEW BLEEDってイベントをやっていたんですよね。東京でない地方発祥だったかな?音楽のマーチャンを仕入れて販売しているところは沢山ありますけど、上手くやっておられますよね。

別府:その辺りのセンスが良いと思うし、周辺のカルチャーも上手に取り込んで盛り上がってますよね。

齋藤:DJイベントであそこまでいけるんだって思ったからね。僕には無い発想で見せ方が上手いですよね。

別府:若い人を掴むのにファッションで重要だなって。

齋藤:カルチャーなんだよね。最近のファッションなんて分らないからな~(苦笑)。

別府:それは前の世代の「デニム&レザー」の世代だからじゃないですか?それが次の世代になって変わったんでしょうね。

齋藤:見ていると何となくこんな感じなんだって分るけど。でも自分の素地に無いものだから、新しいから。

別府:やっぱり広げる媒体も持っているし、全部ひっくるめて凄いと思います。知らないのにこういうこと言っていいのかはありますけど。

齋藤:本当にそれをお金のシステムに変えたっていうのが凄いよね。音楽が不況って言われているなかで事業をやって拡大させていってるんだから。

 (7686)

ヘヴィメタルで言えば次のトレンドのプロデュースを明確にイコールで打ち出せる人だよね。(齋藤)

別府:それを考えると日本のシーンってまだまだこれからの部分ありますよね。

齋藤:いけるって結論になる?

別府:いけるけど、根拠のない・・・、いや根拠もあるのかどうかという。でも同じ方法論でやったら二番煎じになっちゃうし。BABYMETALの成功例、激ロックの成功例、次を見つけた人ですよね。それが勝ちですよね。当たり前のことを言ってますけど。でもそれが難しい。

齋藤:ヘヴィメタルで言えば次のトレンドのプロデュースを明確にイコールで打ち出せる人だよね。日本で若者に人気のあるバンドってCROSSFAITHとかGYZEになるのかな?

荒金: CROSSFAITHやcoldrainとかだと思いますよ。あとはFear, and Loathing in Las Vegasとかも。

齋藤:(Fear, and Loathing in Las Vegasは)売れるんですよ。お店のBGMにしているとお客さんが必ず買っていくんですよ。

別府:マキシマムザホルモンもそうじゃないですか。

齋藤:あのバンドは突き抜けたよね。言い方は悪いかもだけど、あの音で一般の人まで巻き込んだからね。

荒金:荒金:切り開いた道はありますよね。

別府:八王子の小さいライブハウスでやっていたと思ったら、気がついたら雲の上の人になっていたし。それと同じ感覚で思ったのがブラフマンでした。アンチノックで普通にライブ見たなと思って、僕が何年かライブ見なかったらオリコン上位だしTVにも出てるって。ハイスタンダードも同じでしたよ。

奥中:今やTOSHI-LOWさんシーチキンのCMに出てますから、漁師役で。

齋藤:大枠で言う「ラウド」の売れ方ってあるんだよね。変化球がいっぱいあって、売れているんだよね。筋肉少女帯がラウドの枠に入るかどうかは分らないけど、あれだけの「変化球バンド」なのに売れてるよね。違う文化なのかもしれないけど。

別府:ハイスタンダードはキャッチーだったけど、ブラフマンはクセがありますよね。あのクセのあるサウンドでここまで成功するとは思わなかった。だから凄いなと、見つけた人も。

齋藤:ハイスタンダードはズバっと分りやすかったよね。あとさっきの話で言えば「憧れのお兄さん」タイプだったし。

奥中:ブラフマンカッコよいですから、顔も。

齋藤:ルックス?そこ(笑)。

別府:でも見た目も含めてのルックスは大事ですよ。

齋藤:ルックスのカッコイイ、悪いは人によって違うじゃん。

別府:その前で考えるとX JAPANですかね。

齋藤:あのままのルックスでメジャーに行ってしまったのが凄いね。今や世界規模のバンドだからね。X JAPANはスラッシュメタルのムーブメントの中で始めたのに、あそこまでいったから。でもX JAPANファンはX JAPANしか聴かなくて、スラッシュメタルは聴かないから。そこなんだよね。オルガスムの頃、Vanishing Vision頃、BLUE BLOOD頃と見ていくとドンドン変わっていったんだよね、X JAPANの周りが。マキシマムザホルモンは何で売れたんだろ。

奥中:日テレの深夜枠アニメで楽曲が使われていた影響もあるんじゃないですかね。そういえばSABER TIGERも使われてましたよね。

齋藤:そこで言っちゃうと、同じ様な仕掛けをしてマキシマムザホルモンの方が人気が爆発したってとこだよね。ガチガチの正統派のSABER TIGERでなく、変化球気味のマキシマムザホルモンだったのかって。

別府:変化球って当たるとデカイからじゃないですかね。

小川:僕は筋肉少女帯の大槻さんが言っていた言葉で印象的なのが、バンドで売れようが作家で売れようが何で売れようが関係なくとにかく売れたいんだって。そんなことを彼は若い頃言ってましたね。そう言えば人間椅子って不思議ですよね。若い子でも好きな子が多いんですよね。

齋藤:ガチのハードロックなのにね。

別府:それで歌詞は文学的だけどドロドロしてるし。

荒金: 一周して新鮮に聴こえるのかもしれないですね。

別府:人間椅子が知られる切っ掛けとなったイカ天って変化球バンド多かったと思います。スイマーズとかサイバーニュウニュウとか。その中でハードロック系で売れたのが人間椅子。もっとやって欲しかったのがマルコシアス・バンプ。

Marchosias Vamp / バラが好き (GRE '89) - YouTube

マルコシアスバンプ "バラが好き" from GLAM ROCK EASTER 1989 (1989.9.16-SHIBUYA La-mama) ---------------------------------------------------- ★秋間経夫さん(Vo&Gt)-Official Web (Ra...
齋藤:人間椅子ってメジャーでずっとやってきているけど、そんなに爆発もしていないけどだからって落ちてもいない。そこが凄いんだよね。ずっと活動していてコンスタントに売れているバンドなんだよね。

荒金: 23年ぶりに渋谷公会堂でやってソールドアウトでしたからね。

別府:でも日本てやっぱり演歌や歌謡曲の国なのかなって思っちゃうんですよね。なかなか入りこめない。だって和音階があるんですから。

齋藤:そうだよね(笑)。

別に日本語で一部でもいいからやってくれれば感情移入して歌えるのにと思う時もあります。(小川)

荒金:イギリスではIRON MAIDENはサブちゃんですよ。三世代で見に行って盛り上がってますから。土壌が違うんですよね。

別府:年齢層が幅広いんですよね、生まれた時からそういった音楽が流れている環境だと思うから。日本だったらサブちゃんを三世代で見に行っている人の方が多いんじゃないですか。

齋藤:アメリカだったら親子三代でJOURNYとか普通にいそうじゃない。

別府:ギリギリ日本なら親子三代でLOUDNESSかなって。

小川:そうとう小さい子供ならね。

齋藤:そういったロックの土壌の成熟度なんですかね。もう少しな感じもするんだけどね。AKB48とかでアレンジでロックアプローチしているものは受け入れられるわけだし。40歳台半ばのおっさんがメイン世代だからある程度は根付いてはいると思う。でもLOUDNESSが新譜を出したらそれがチャートの1位になるわけじゃないでしょ。それがイギリスだったらIRON MAIDENが1位になるけど。そこじゃないかな。

別府:そういった国民的人気があるバンドがいないんですよ。イギリスだったら昔はTHE WHOがいてみたいな。

齋藤:欧米のロックの歴史は長いんだよ。THE ROLLING STONESやTHE BEATLESを聴いてきた人はおじいちゃんじゃん。そういう世代が孫やひ孫がいる世代でしょ。

別府:あとは海外では「洋楽」ってジャンルは無いですよね。「洋楽」「邦楽」ってないですよ。ロックもポップスも国に関係なく聴いているのにと思います。洋楽と邦楽って分け方があるのがおかしいと思いますよ。

齋藤:洋楽ってありえないよね。英語圏でないところだったら違う国の音楽とは思うかもしれないけど。

別府:ロック、ポップス、AOR、ヘヴィメタルって枠はあると思うけど、その中では国は関係ないと思うんですよ。そこで洋楽と邦楽に分けているのが凄く引っかかります。

齋藤:海外で売れてなくて、日本で上手く加工して商売している場合もあるよね。これをこうしたら売れるなって頭でいてそれで売るだけの手腕があるから凄いと思う。それは敵わないと思う。それを響かせるセンスとか海外から持ってくるセンスとか。メジャーって著作権ビジネスが多いでしょ。売り方に関しては、頭が良いと思うよ、スキャットマンジョンとかね。

別府:話も長くなって暗いのか明るいのかも分らなくなってきました(苦笑)。

齋藤:CROSSFAITHも成功例を出している。世界にも発信できる素地はできていると昔よりは思う。日本には昔からのフジヤマゲイシャサムライなんてイメージもあるし、アニメのイメージもあるけど、それとは違う方法論でCROSSFAITHが出てきたのは明るい話題だと思う。今でもフジヤマゲイシャサムライの部分を求められるんですよ、それなのに英語だって。何だそれって思うけど。外国からの変なイメージがあるけど、それとは違う戦略でCROSSFAITHが出たからね。

荒金: BABYMETALは日本語で向こうの人に歌わせているのが凄いと思う。見ていて感動しますよ。You Tubeで見て勉強しているみたいですけど。

齋藤:絶対言われるんだよね。歌っているのは日本語って言うと海外の人はあまり反応しないのに、それも何なのと思う。

別府:でも日本語で歌っている人も海外で増えてきましたよね。それってアニメの影響も大きいと思いますよ。聖戦士星矢とか歌ってますからね。

聖闘士星矢の主題歌を歌う外国人 - YouTube

あし~た~の勇者~♪ オウヘェ~♪
齋藤:してるしてる(笑)。それは日本語でやらなくちゃ意味が無いと思っているからだよね。

別府:そこを気づかせたアニメの影響力って凄いですよ。

齋藤:歪んだ日本観なのかもしれないけど、その日本語に対するネガティブなイメージが薄まるといいですよね。

別府:日本人が英語の歌を聴く様な感覚で、欧米の人が日本語の歌を聴いてくれたらと思うんですよ。意味が知りたかっらたら英語にした歌詞カードを読めばいいし。

齋藤:僕は日本人なんだから日本語で歌った方がいいと思うことも多いんですよ。これは僕の歪んだ世界観なのかもしれないけど。だって日本人は英語がネイティブではないから、一番響くのはネイティブな日本語だと思うんだよね。

別府:海外の人が日本語で話すとイントネーションとか言葉の繋がりも変な時があるじゃないですか。日本語を得意でない海外の人が日本語で歌を歌っても変な時があるし、それと逆のこともやってもどうかなって思う時もありますよ。難しい問題なんですけどね、やっぱり英語で歌った方が普通にカッコイイと思える時も当然あるし。ウン、難しい(苦笑)。

小川:僕は日本のバンドが英語で歌っている時に違和感を感じるんですよ。別にそれを突破する位に好きだからいいけど。別に日本語で一部でもいいからやってくれれば感情移入して歌えるのにと思う時もあります。

齋藤:それは僕もリスナーとして聴いた時に感じる時があって。某バンドですが日本語ヴァージョンと現地語バージョンがあって、後者の方が断然良いんですよ。

別府:こういった話を振って言うのもなんですが、やっぱりそこも日本人がやっていく上でジレンマなんですかね。そう考えるとバンドの人の試行錯誤って凄いと思います。日本語って文法から発音から英語とは全然違うし、ドイツの人が英語を話すのとは違うと思うんですよね。とにかく廃れなければいいけど。

齋藤:絶対残るとは思うけど。形は色々変わるかもしれないけどね。

小川:無くなるとは絶対思わないけど、自分が好きだから残したいとは思いますね。

別府:それに携わっていく人がどれだけ残っていくかですよね。僕は諦めていますよ、2000年は超えられなかったしね(一同爆笑)。もう若い人が頑張ってねって。

奥中:年齢のいった人がいつまでもいるから若い子たちがシーンに入ってこないっていう意見もありますけど、若い子は若い子でシーンを作っていますよね。

別府:そことの交流が無いのかなって。だから年寄りしか残っているんじゃなくて、シーンとシーンの上手く繋がってないだけなのかなって。

齋藤:CROSSFAITHを見た時に客層が明らかに違うと思ったから。どこに君たちいるのって子が沢山いたよ。僕は全然知らないやって、アウェイ感がハンパなかった。これはと色々と思うよ。僕に見えてなかっただけなんだよ。インディペンデンス-Dに行った時も年齢の高い人もいたけど、若い子もこんなにいるんだって同じ様に思ったしね。

荒金: Fear, and Loathing in Las VegasとLOUDNESSが一緒にやったのを見に行ったのですが、その時にこういうことがもっとあれば良いなと思いました。

別府:繋がりの無いところで異文化交流じゃないけど、やっていったら新しい繋がりや流れができるのかなと。

荒金:もっとそういうことをした方がいいですよね。

齋藤:海外はヘッドライナーがあると、その前に2~3バンドオープニングアクトが付くでしょ。それが日本の文化としてはそれほど無いからね。

別府:海外のそういったオープニングアクトとか見ていくとヘッドライナーと音楽性違うものがありますよね。例えばOZZY OSBOURNEのオープニングアクトにMETALLICAが出ていたり。今ならそう驚きはしないけど、当時(1986年)はビックリしましたよ。こんな組み合わせでやっていたんだって結構ありますよ。

齋藤:あれでMETALLICAは更に大きくなっていったからね。そういったことが日本であるといいな。

荒金: それだったらLUNA SEAのフェスがそうなんじゃないですかね。ああいったことをやっていかないと混ざっていかないと思います。あのラインナップは素晴らしいと思います。

齋藤:今はフェスティバルって当たり前で飽和状態だと思うから、こういったことで広がっていけばね。フェス慣れしているから普通に僕たち世代でも普通に受け入れられるから。

荒金: バンドだけでなくメディア媒体の人も繋がりを見せられる様な感じで、みんなやったらいいと思います。

お茶の水HARD ROCK/HEAVY METAL館